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コント『オレがみえるのか』


(公園のベンチに男が座ってスマホを見ている。その様子を後ろから幽霊の男がのぞいている)

【幽霊の男のモノローグ】

 オレは幽霊だ。気がついた時にはこの公園で幽霊になっていた。生前の記憶はほとんどない。しかし、幽霊について強く思っていることがある。

 ベンチに座っている男がスマホで動画を見ている。ホラードラマのようだ。動画の中の少年が言う。「お兄ちゃん、ぼくのことがみえるの?」
 これだ、「ぼくがみえるの?」だ! 生者に見つかった幽霊は必ずこのセリフを言うのだ! ワンパターン、あまりにもワンパターン! もしオレが生者に見られたとしても、このセリフだけは絶対に言わないと心に決めている。
 では、何と言えばいいのか、それはまだ考えがまとまっていない。うーん、どうしたものか…。


【ベンチに座る男のモノローグ】

 オレは幽霊がみえる。物心ついた時にはいろんな場所で幽霊がみえていた。みえるからといって特に実害があるわけではない。しかし、幽霊について強く思っていることがある。

 スマホでなんとなく見ていたテレビ番組がホラードラマになったようだ。動画の中の少年が言う。「お兄ちゃん、ぼくのことがみえるの?」
 これだ、「ぼくがみえるの?」だ! オレがみた幽霊は必ずこのセリフを言うのだ! ワンパターン、あまりにもワンパターン! オレはもう何十回、何百回とこのセリフを聞いていてもう飽き飽きしている。
 だから最近は幽霊をみても、みえたことを悟られないように振る舞っている。幽霊がオレがみえていることに気づかなければ、そのセリフを言うこともない。今もオレの後ろに幽霊がいるが、平静を保って気付かないふりをしている。平常心、平常心っと。




(ボールが転がってくる)

遠くから声「すみませーん、ボールがー」

(男がベンチにスマホを置き、立ち上がり、ボールを拾って投げる)

(ベンチに戻ろうとする男と、幽霊の男の目が合い、双方固まる)

【幽霊がみえる男のモノローグ】

 しまった! 今完全に目が合ったよな? この幽霊、オレがみえていることに気づいたか! くそっ、「オレがみえるのか?」とまた言われてしまうのか?

【幽霊の男のモノローグ】

 なにっ! 今完全に目が合ったよな! この男、オレのことがみえているのか? くそっ、確かにこんな時には「オレがみえるのか?」と言いたくなる! だがオレは絶対に言わないぞ! 言わないんだ!

【幽霊がみえる男のモノローグ】

 なんだ? この幽霊、「オレがみえるのか?」と言ってこないぞ? もしかして、オレがみえていることに気づいていない? ならば、みえていないことにして、この場は切り抜けさせてもらう!

(幽霊がみえる男がベンチに座り直す)


【幽霊の男のモノローグ】

 なんだ? この男、何事もなかったかのように座っただと? やっぱりオレがみえていなかったのか? 目が合ったと思ったが勘違いだったか? 
 いや、しかし気になる。みえていないふりをしているのかもしれない。だとしたら何か声をかければはっきりする。だが「オレがみえるのか?」だけは絶対言わないと決めているんだ! どうすればいい? 

【幽霊がみえる男のモノローグ】

 よし、幽霊から声をかけられなかったぞ。オレがみえていることに気づかなかったか。目が合ったと思ったが勘違いだったと思わせられたな。
 いや、しかし気になる。みえていることに気づいているがあえて何も言わなかったのかもしれない。現にこの幽霊はめっちゃオレを見ていて動こうとしない。だが「オレがみえるのか?」だけは絶対言われたくないんだ! どうすればいい?

(しばしの沈黙)





(ネコが歩いてきてニャーンと鳴く)

幽霊、幽霊がみえる男「「ネコちゃん、かわいいっすね」」

(二人は顔を見合わせてはにかむ)

〜End〜

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