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『風と共に去りぬ』マーガレット・ミッチェル 「憧れる生き方」と羨望して

このnoteは、まだ本を読んでいない人に対して、その本の内容をカッコよく語る設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『風と共に去りぬ』マーガレット・ミッチェル

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【『風と共に去りぬ』を語る上でのポイント】

①映画との違いを指摘する

②スカーレットの生き方に惚れる

の2点です。

①に関して、よくあることですが映画と小説ではだいぶ印象が違います。まず小説では主人公スカーレットの容姿は映画ほど美しくはありません。他にも映画には出ていない登場人物などが沢山います。

②に関して、スカーレットは嫌われ者の性格をしていますが、欲望のままに行動する大胆な生き方は、少し羨ましく思えます。


○以下会話

■「人種差別文学」ではない

 「いま読むべき小説か。そうだな、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』がオススメかな。原作より映画の方が有名だよね。アマゾンプライムで見れるよ。

いまミネソタ州で白人警官に黒人が殺害されたことがきっかけで、Black Lives Matterの人種差別撲滅運動が起きていて、それに伴って『風と共に去りぬ』の映画が「黒人差別を肯定している」という理由で動画配信会社が配信を止めたりと、何かと話題になってるよね。でもこの映画の原作の、マーガレット・ミッチェルが書いた小説の『風と共に去りぬ』は、女性の力強い生き様とすれ違う恋模様が生き生きと描かれているとても良い作品なんだよ。

確かに映画では、奴隷文化があった時代を「古き良き時代」として描いてしまっているんだ。だけど映画と小説は別物として考えて欲しいんだ。小説の方も、南北戦争があった1860年代のアメリカが舞台だから、何の疑問もなく奴隷が出てはくるんだ。だけど、きちんと読んでいけば「奴隷制度を肯定している小説」とは読めないはずなんだよね。小説版を一度読んでもらって、『風と共に去りぬ』の本当の魅力を知って欲しいんだ。

『風邪と共に去りぬ』は、南北戦争下のアメリカ南部ジョージア州で、スカーレット・オハラという一人の女性が、様々な苦難に陥りながらも、がむしゃらに生きる恋愛活劇なんだ。読んで欲しいと言っても、文庫本で全5巻もあるから読むのたいへんなんだよね。でも楽しみ方としては、主人公のスカーレット・オハラの力強さに注目して欲しい。女の子はきっとスカーレットに魅了されてスカーレットみないになりたいって思うはず。僕は男だけど僕も彼女に憧れを感じた。

■何があっても屈しないスカーレット

物語の舞台は、奴隷制に反対している北部と、その奴隷を使って農業を発達させている南部との対立が深まるアメリカ。「タラ」という場所に大農園を持つ裕福な家の娘のスカーレットは、利己的で自己中心的で目立ちたがり屋。だけど独特な風貌とその魅力で男からはモテモテで何不自由なく暮らしていたんだ。

そんなスカーレットがある日、密かに想いを寄せていたアシュレが他の女性と結婚することを知らされる、というところから物語は始まるんだ。スカーレットは、「アシュレは私に好意を抱いていたはずだ」と思って、急いで会いに言って「私あなたのこと好きよ」って告白するんだ。するとアシュレは「僕も好きだけど性格がちょっと、、」って言うんだよ。確かにアシュレは読書と音楽鑑賞が好きな物静かな人で、強欲なスカーレットとは正反対の性格だったんだよ。その言葉を聞いてショックを受けたスカーレットは、部屋の沈黙に耐えきれなくなって手元にあった花瓶を暖炉に向かって投げつけるんだよ。

ガシャンと花瓶が割れると背を向けていたソファから、「おいおい危ないな」って一人の男がむくっと起き上がるんだよ。二人っきりだと思っていたスカーレットはびっくりしてよろめくんだ。ソファから現れたのはレット・バトラーという男だった。彼はもともと裕福な生まれだったんだけど、素行の悪さから故郷を追い出されてしまっていたんだ。彼は、出兵もせず、戦争中に敵である北部と貿易をして儲け、南部の連中の前で「南部にあるのは綿花と奴隷と傲慢さだけじゃないか」って言ってのける男だったんだよ。そしてそんなレットは強欲さとか一匹狼なところとか、どことなくスカーレットと似ているところがあったんだよ。

アシュレにふられたスカーレットは、腹いせにアシュレの奥さんのお兄さんと結婚をするんだよ。「腹いせ」に結婚するって凄いよね。スカーレットはその愛していない夫との間に子供ができたんだ。だけど、夫が南北戦争で戦死してしまって、あっという間に未亡人になってしまうんだ。

身寄りがないスカーレットは故郷の「タラ」に戻って両親の元でのんびりと暮らすことにするんだ。だけど、懐かしさと安心した気持ちで向かった「タラ」は、戦争で見るも無惨に崩壊していたんだよ。そして母親は病気で亡くなっていて、父親も精神的に病んでしまっていたんだよ。さらに北部の兵が物を奪いに来たり、莫大な税金をかけられたりと、紅茶を飲みながらのんびり暮らせると思ってたスカーレットに、過酷な現実が突きつけられるんだよ。

ここでくよくよしないのがスカーレットなんだ。これから先、飢えに泣かないことを神に誓い、お金のために行動し始めるんだ。

まず「妹が資産家の息子と結婚する」と聞くと、その結婚相手を妹から奪って自分が結婚して金を巻き上げるんだ。すごい。そして当時女性は家にいるのが良しとされていた中、持ち前の計算高さで農園を経営して、商売に才能のない夫に代わって、スカーレット自ら夫の家の商売を始めるんだ。さらにその夫が町のいざこざで銃殺されると、かねてから莫大な富を築いていたレットと三度目の結婚をするんだよ。ここでいきなりのレットの登場。実はレットは、花瓶を投げられた最初の出会いからスカーレットの気高さに惹かれていたんだ。凄いところに惚れたよね。だけど肝心のスカーレットは結婚はしたけれどお金のためだったから、レットからの愛には答えず、真の夫婦愛を築こうとはしなかったんだよ。

その後、二人の間に出来た子供が流産してしまったり、連れ子が落馬して死んでしまったり、それがきっかけでレットとの関係が悪くなったり、やっぱりまだアシュレが好きだったり、友人が病死してしまったりと、色んな苦難が起きるんだよ。

最後スカーレットは、様々な人の死に直面したことで、本当に自分を愛してくれていたのはレットで、そのレットを自分も愛していると、自分の正直な気持ちに気がついたんだ。そしてレットに思いを伝えに行くんだよ。だけどレットは「もう疲れたよ」と言って、今度は自らスカーレットから去っていくんだ。

自分を支えてくれたレットや子供や友人を失い、ひとり孤独になってしまったスカーレットは、それでも「明日という日があるわ」(明日は明日の風が吹く)と言って前を向いて歩いていくんだ。これでお話は終わり。

■メンヘラの逆の人

スカーレットのすごいところは、恋愛がうまくいかなくても、故郷が荒れていても、どんな嫌なことがあっても、うじうじ悲しまないところなんだ。

三流小説の主人公なら、泣いて悲しんでどん底になって何か格言めいたことを言うシーンでも、スカーレットは歯を食いしばって「ふざけんな」ってセリフを吐き捨てて前進していく。

メンヘラな女の子が「もう嫌だ、死にたい。」って病むところを、スカーレットは「まじムカつく、あいつ殺す。」って逆にパワーがみなぎっていく感じ。そして実際に、魅力的な容姿と、商売の才能を活かして、力強く生きていくんだ。

■スカーレットの2つの名言

このスカーレットの気力は自身の言葉にも表れているんだ。

故郷の「タラ」が戦争で荒れてしまった姿を見たスカーレットは、一度泣いた後すぐに立ち上がって、「神様誓います。私はもう二度と飢えに泣きません。」って宣言するんだよ。そして「家族にも飢えさせない。そのために盗みも騙しも人殺しもするでしょう。ですが、私は二度と飢えに泣きません。」って続くんだ。そして資産家と結婚したり、商売をしたりするんだ。とても真似できない力強さだよね。

そしてもう一つの名言は「Tomorrow is another day.」というスカーレットの口癖。日本語では「明日という日がある」とか「明日は明日の風が吹く」とか訳されているんだ。スカーレットは男にフラれたり、旦那が死んだり、故郷が荒らされたり、何か困難に直面するたびに「Tomorrow is another day.」と言って自分を鼓舞するんだよ。とてもポジティブで良いよね。

■ナミとスカーレット

多分だけど、ワンピースのナミはスカーレットをモデルにしてると思うんだ。恵まれた容姿で男からはモテモテで、利己的で盗みをして生きている。そして何より、ワンピース10巻でナミが魚人のアーロン一味に立ち向かおうと奮起して、「もう泣くだけ泣いた。弱音も吐いた。覚悟も決めた。行かなきゃ。みんな戦ってるんだ。」と言って、涙を拭いて立ち上がるシーン。これは確実にスカーレットだよね。

■レモンを絞った鶏の唐揚げ

このさっぱりしててガツガツしてるスカーレットは、食べ物に例えるとレモンを絞った鶏の唐揚げみたいなんだ。ヘルシーフードが流行するいま、ニワトリを殺して小麦粉をまぶして油で揚げたギトギトの唐揚げなんて、全く健康的じゃないしスマートじゃない。だけど絶対美味しくて、嫌いになれない。そこにレモンを絞ると、ガツンとした油に爽やかなレモンの香りがさっぱり感をだしてさらに良い。

スカーレットは利己的で自分の思う通りに振舞って、悪さにも手を染めちゃう。だけど出来る女としてキビキビと働く。たまに嫌なことがあってもさっぱりと忘れて、朝になったらまた日常という戦場に向かってガツンと動いていく。思いきりがよく強く生きている姿に潔さとかっこよさがある。そして僕はそんな彼女に尊敬と「こうなりたい」という思いを抱く。まさにレモンを絞った鶏の唐揚げなんだ。

■『風と共に去りぬ』の本当の魅力

人種差別はあってはならないことだし、僕も有色人種である身として、Black Lives Matter運動に賛同はしている。だけど映画『風と共に去りぬ』の公開を止めることには反対なんだ。

時代に応じて表現は変わる必要があって、2020年のいま黒人奴隷を肯定する作品を作ることは許されないよね。だけど、映画『風と共に去りぬ』は、「黒人を奴隷にした時代があって、この作品の製作者はその黒人奴隷を肯定してしまっている」ということがわかる作品として残しておくべきだと思うんだよ。差別意識が低い時代があった証拠だよね。

幼稚な例えになってしまうけど、いじめられた経験を持つ人は、そのいじめをなかったことにして欲しい訳ではないよね。いじめた加害者が反省したり罪を償ったり本気で改心することを望んでいるよね。『風と共に去りぬ』での黒人の描き方は、黒人奴隷を肯定する古い悪い描き方だけど、作品を残すことで「この考え方は間違ってるよね」と考えるきっかけになると思うんだ。

そしてなにより、映画版の配信停止のニュースを受けて『風と共に去りぬ』=差別文学というイメージを持つのは悲しいなって思うんだ。ちょっと長いけれど是非一度読んでもらってこの小説の本質を読み取って欲しいなって思うよ。そこに書かれてるのは、魅力的なひとりの女性の生き方そのものなんだ。」


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