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『新・四字熟語』又吉直樹「更に又吉直樹を好きになるよ」と、布教して

○はじめに

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『新・四字熟語』又吉直樹

【又吉直樹の作品を語る上でのポイント】

①言葉選びに注目する

②過剰なセンチメンタルさを指摘する

の2点です。

①に関して、又吉さんは『火花』で一躍有名になりましたが、小説だけでなくエッセイ、俳句も書いていて、その言葉選びが繊細で上手です。しかも、ただ繊細なだけではなくてお笑い芸人らしい笑いの要素も取り入れてるので敵なしです。

②に関して、又吉さんの作品は彼のセンチメンタルさから来るものだと思います。何をするにも人の目を意識してしまい、その人の目を意識する自分すら意識しているという、二重にも三重にもぐるぐるに巻かれた自意識から発される言葉が魅力的です。


○以下会話

■今の時代の四字熟語

 「簡単に読める本か。そうだな、そしたら又吉直樹の『新・四字熟語』がオススメかな。これは、ピースの又吉直樹が、「現世を標榜する新たな四字熟語があって然るべき。」という考えから、自分で考えた四字熟語とその意味と用例をまとめた著書なんだ。電車とかちょっとした空き時間に読むのに最適な本だよ。『火花』を出す前に書いた本で、既に文学への才能が溢れ出てるんだ。

■「フワフワ感」が楽しむポイント

『新・四字熟語』は、堅苦しく「新四字熟語」の意味と用例を辞典っぽい文体で書いてるんだ。だけどその中で、四字熟語をきっかけに短いエッセイが書かれてたり、笑える実例が書かれてたりするから、辞書がふざけ出したような、NHKのニュースでアナウンサーがボケるような、ちょっとしたフワフワ感があるんだよね。そこが面白くてこの本に引き込まれていくんだよ。中でも特に僕が気に入った新四字熟語をあげるね。

■新四字熟語

神様嘔吐(かみさまおうと)・・・神様が嘔吐するほど、救いようが無いありさま。また、俗物の低俗な願いを神が聞き、吐き気をもよおす様子。

用例:「この際、友達は全員落ちていい、だが俺だけは合格させてくれ」なんて神様嘔吐もはなはだしい。

構内抱擁(こうないほうよう)・・・真夜中の駅構内のホームの隅やコインロッカーの前で抱き合っているカップル。転じて、「なぜここで?」という意。

用例:怒る父に、覚えたてのマジックを披露し機嫌を取ろうとしたが構内抱擁だったのか、しばかれました

怪談謙虚(かいだんけんきょ)・・・申し訳なさそうに怪談話すな。怪談する前に、「似たような話、よく聞くんで多分嘘やと思うんですけど」とか言うな。興ざめやわ。もっと、おどろおどろしく話せ。怪談に謙虚さいらんねん。悪役レスラーが戦う前に「多分負けます」とか言うてたらいややろ。

衝動男児(しょうどうだんじ)・・・すぐに「バンドやろうぜ!」とか言う奴。

菩薩募集(ぼさつぼしゅう)・・・「救いが僕のとこまで回ってこないんです」と電話で苦情を言ったら、「ただいま、大至急菩薩を募集していますのでお待ちください」と言われた。途中で電話が切れたので、直ぐにかけ直したが、回線が込み合っているようで二度と繋がらなかった。ここでも、菩薩が足りていないようだ。

■又吉直樹の才能と田中象雨の表現

面白いでしょ。こんな感じで100以上の新四字熟語が書かれてるんだよ。個人的には「神様嘔吐」が一番好きかな。「そのがめつさ神様嘔吐だな〜」って日常生活でも使いたくなるよね。著書では、これらの新四字熟語を、田中象雨という書道家が四字熟語の意味に合わせて書いた字が載ってて、こんなに文字の表現方法ってあるんだなって感心するよ。確かにただ新四字熟語が並ぶだけだったら、読み飽きちゃう可能性があるけど、田中象雨さんの表現が良いアクセントになって次のページをめくりたくなるんだよね

当然又吉さんの日本語感覚もずば抜けてるんだ。四字熟語って古風で重々しい雰囲気があるよね。又吉さんの作った新四字熟語は、新しい言葉のはずなのに、ちゃんと古風な雰囲気もあるのは何でだろうね。僕も真似してオリジナル新四字熟語を作ってみたけど、まずこんな何個も熟語が浮かばないし、用例を書いてもなんか陳腐に見えちゃうんだよね。もちろん又吉さんの文学的才能もあるんだけど、根底に人を笑わせたいという芸人魂があるから、その又吉さんが紡ぎ出した新四字熟語は、見ていて楽しいんだろうな。読んだらぜひ感想聞かせて。」

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