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『カキフライが無いなら来なかった』又吉直樹×せきしろ 「自由律俳句の世界は無限だよ」と、夢一杯に

○はじめに

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『カキフライが無いなら来なかった』又吉直樹、せきしろ

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【又吉直樹の作品を語る上でのポイント】

①言葉選びに注目する

②過剰なセンチメンタルさを指摘する

の2点です。

①に関して、又吉は『火花』が有名ですが、小説だけでなくエッセイ、俳句も書いています。その言葉選びが繊細で上手で、更に笑いの要素もあるので敵なしです。

②に関して、又吉さんの作品は彼のセンチメンタルさが色濃く出てます。何をするにも人の目を過剰に意識して、人の目を意識する自分すら意識しているという、二重にも三重にもぐるぐるに巻かれた自意識から発される言葉が魅力的です。


○以下会話

■2桁回は読み直せる本

 「文字を読むのが苦手な人にオススメの本ですか。難しいですね。それならピースの又吉直樹とせきしろっていう人の共著の『カキフライが無いなら来なかった』っていう自由律俳句の本が良いですかね。僕は多分20回は読み直してます。そのくらい面白いです。

おすすめする理由は3つあって、まず文章が超短い。次に共感ポイントが山程ある。そして、もしこれにハマったらきっと好きになってくれる作品が沢山ある。の3つですかね。

■自由律俳句は文章が苦手でも楽しめる

自由律俳句ってご存知ですかね。普通の俳句は五七五という形があるじゃないですか。その形に囚われずに自由に読む俳句が自由律俳句で、種田山頭火と尾崎放哉の2人が一番有名なんです。聞いたことありますかね。有名な俳句は、尾崎放哉だと「咳をしても一人」とか「いれものがない両手でうける」とか。種田山頭火だと「まっすぐな道でさみしい」とか「分け入っても分け入っても青い山」とか。

何となく知ってますかね。この自由律俳句をピースの又吉直樹さんと、文筆家のせきしろさんが詠んでまとめたのが『カキフライが無いなら来なかった』なんですよ。その中でも僕が気に入った句はこれらですね。

まだ眠れる可能性を探している朝

間違えたビニール傘に知らない人の温もり

山では素直に挨拶出来る

見よう見まねのコイントスをしたばかりに

これ以上のダメージはジーンズで無くなる

皆車窓から虹を見ていた恐そうな人も

喧嘩しながら二人乗りしている

コンビニの袋何より高く舞い上がっている

まだ何かに選ばれることを期待している

どうですか、このクオリティ。こんな短い文字で情景がうわっと広がりますよね。僕は特に、「これ以上のダメージはジーンズで無くなる」を見たときに面白すぎて衝撃が走りました。ダメージジーンズって普通に言いますけど、そのダメージもジーンズの範囲内だから成り立っているので合って、過度のダメージはジーンズをジーンズで無くしてしまうっていう。言葉で遊んでますよね。その着想が僕には無くて衝撃でした。

又吉さんとせきしろさんは、自意識が人一倍強くて人の目線を気にしすぎて、自分の行動全てに第三者の視点でツッコミを入れてるんですよねきっと。だから、普段無意識にする動作も、又吉さんとせきしろさんはどこか冷静に俯瞰して見てて、その動作を彼らの言語センスで作品に落とし込んでるんですよ。

■共感ポイントがたくさんある

例えば、又吉さんの句の、

便所目当ての百貨店だが買いもの顔を作る

これもめちゃくちゃ共感できますよね。トイレを借りるだけの目的で百貨店に入るんですけど、店員に対して後ろめたさがあるから、無意識に何か買う雰囲気を出して、全く買う気ない服に少し触れてみたりしちゃいますよね。

この自由律俳句にまつわるエッセイも書いてあるんですよ。

小さな雑貨屋に迷い込んでしまった時なども同じような事態に陥ることがある。店に入った瞬間、並べられた商品は自分の趣味ではないと気付く。しかしすぐに店を出ることができない。「結構気に入ってますよ」と余裕の買いもの顔を作り、よく解らないガラス細工の小物などを手に取り裏まで見て、場違いなところに来た侵入者ではないと店員にアピールしてしまう。誰もそんなことは求めていないというのに。ひどい時は、「何時まで開いてるんですか?」と店員に質問し、一旦店を出るもののいかにも再び戻ってきそうな雰囲気を残してようやく店を後にするのである。そして、そのまま行けばよいのにわざわざもう一度振り返り看板を見上げ、「良い店だな」という表情を残して去って行くのだ。

閉店時間聞いて看板見上げちゃうの面白いですよね。この動作をこんなに巧みに書けるのは人並み外れたセンチメンタルさと自意識過剰さが合わさってのことで、またそこが良いんですよね。

今この本持ってるので貸しますよ。ツイッター見る感覚でパラパラってめくってみてください。もし面白いなって思ったら、『まさかジープで来るとは』っていう次回作とか、これに似た系統でオススメ紹介しますね。」


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