日本死神協会二次元部門少年部署戦闘課

課題内容:自分が選んだ本を誤読し物語を書く


ここは、日本死神協会 ” 二次元 ” 部門。対象年代ごとに部署があり、少年部署、青年部署、少女部署、などが存在する。部署にはそれぞれジャンルごとに ” 課 ” が設立されている。バトルもの、恋愛もの、ギャグものなど… ” 課 ” は覚えられないほどある。実際、俺も自分の所属以外の課は二…いや、三個くらい覚えている。 ” 課 ” の中には、作品ごとに担当の死神がおり、作品が続く限りその死神が一人で仕事をする。

「あ゛ーーっ!!!なんでだよ!?おい、作者!なんでこの子を殺したんだよ!!!俺、この子、好きだったのにー!!!」

「先輩、声大きいですよ。って、また推し死んだんですか?」

「そ~なんだよ~、後輩~(泣)しかも、今回で最終回だぜ~、俺の最後の仕事が ” 推しを迎えに行くこと “ とか最悪だろ~(号泣)」

「はいはい、それ終わったら次の作品が待ってますよ」

俺の左に座っている後輩の死神。最近、自分の担当作品の連載が終わってひと段落していた。

死神のお手本のように、クールな性格。キャラへの愛情は薄く、仕事を黙々とこなす。俺とは正反対。

すると、当然後輩ののデスクの電話が鳴る

「はい。あっ、課長どうしたんですか?はい、はい、先輩なら横にいますよ。はい、分かりました」

「……次の作品の話か?」

「多分そうだと思いますよ。明日、朝イチで。だそうですよ」

「ふーん、俺ら二人か」

その日の午後は、推しを迎えに行った。


「ここは……?」

「お早い到着ですね」

推しを目の前に、俺の涙腺は崩壊しそうになった。推しが…目の前にいるのに…俺は…

「初めまして、日本死神協会二次元部門少年部署戦闘課の者です」

少し困惑しながら、俺の名刺を受け取る推し…。

「あはは、私死んじゃったんだ……。ねぇ、この後、私どうなるの?」

「そうですね~、幽霊になって作者の側で生きる方もいれば、いわゆる雲の上で作品に関わった人間を見守っている方もいますね」

「なるほどね…」

うわー、やめろー、泣かないでくれー。こっちも辛いんだよー。作者ーお前さー。

「ま、後者の方が楽そうね。そっちにするわ!」

あぁ、この子は強いな……。自分が死んだのに、笑顔で前に進むことができて……。

推してて、よかった。君が世界に生まれてきてくれてよかった。作者、お前最高だよ。


「課長失礼します」

「おお、待ってたぞ。早速だが、次の作品だ。明日から、頑張ってくれ」

「はい(今度はどんな作品なんだー……)」

【地獄楽】

課長から渡された茶封筒の中身を確認すると、そのような文字が大きく書かれていた。

その下に、作品のジャンル、作者の名前、時代設定などの俺らに必要な項目が書かれている。

「……(地獄、楽?いや、地、極楽か?)」


課長の部屋を出てすぐ、後輩の顔を見た。少し顔色が悪い気がする。

「おい、大丈夫か?」

「えっ、あ、はい……あの、今回の作品が苦手ジャンルで……」

「あー……。毎月のアンケート書いてる?」

「書いてますよ!っで、これですよ!?あの、クソ人事が……!」

感情差が激しい後輩を宥めながら、明日の準備をする。

「地獄楽ねぇ。時代が時代だったし、大御所になる可能性が高そうだよなー……覚悟しとこ」


「ゔぁぁぁっー!!!!!何なんだここは!?!?!つかこいつら、俺のこと見えてんじゃん!!!こっちくんな!!!俺ら足速くないんだよ!!!」

人の体に魚の顔。虫の体に人の顔。この時代に、ないものがそこにあった。

「おいおいおい!こんなの聞いてないぞ!そりゃ、言ってないからな!つか俺、虫嫌いなんだが!?!?これ絶対、全員死亡でバットエンド確定だろ!仕事が早く終わるのはいいけど、人の心はとかないんか!?なあ、作者!?!?」

この後ちゃんと仕事をこなし……てない。

なんなら、死に際がしんど過ぎて、俺のメンタルにクリティカルヒット、からのブレイクによって戦線離脱。特に「せんた」「てんざ」とか言うキャラ……ほんま、作者~

「ん?ここどすか?ん~確か、先生に向かって……」

「え、え、て、てんざさん!?どうしてここに!?」

「あっ、せんたさん!はっ!傷がない!つまりここは、あの世すか!?」

うわー、最悪だー。

俺のメンタルがブレイクしてるのに来ちゃったー。死亡→迎え、までに若干のラグがあるからこうなるんだよなー。すっこ抜けてたー。

「えっと、お二方少し宜しいですか?」

「はい、大丈夫っすよ!」

「私、日本死神協会二次元部門少年部署戦闘課の者なんですが~」

「へ?」

あーーーーー、ジェネレーションギャップ!ごめんね、こんな俺で!所属の名前長くてごめんねー!

「俺は、死んだのか」

「そうなんじゃない?あ、えいぜんだ」

「きしょう、ここはあの世か」

「さあねー。だってここ、罪人がいないからなー」

わー、やべー、どんどん来るー\(^o^)/

まだ、罪人側がきてないからマシと思え、俺!!!

「えっと、そこのお三方もこっちに来てくださーい。これからの事とか話しますよー」

結局この後、罪人サイドもきっちり来た。一部話が通じない奴がいたが、そこはゴリ押し。

課長から、「その作品アニメも決まってるから」って言われた……。過労死しろと?

天仙?とかいう奴もきた。もう、俺、人間のこと笑えないかもしれない。

その後も、迎えを完璧?にこなし作品が無事完結した。

「さて、報告書を……。あれ?このキャラどうやって死んだんだっけ……。てか、迎え行ったか俺?え?は?あれ?」

現世の反応を、急いで確認した。そこには【  】だった。

「空白?俺が担当のはず……。っは!?」

この部署に来た時に説明されたことを思い出した。


『時折、死んだはずの奴が来なかったり、死んだかどうかも分からない奴がいる。それから、これは、前例が少なすぎて傾向が不明なんだが……。キャラクター本人に魂のようなものが宿り、自身が死んだ事に対しての拒否反応が起こる。その後、我々や作者でさえも接触できない状態となる。この場合、報告書などの書類には【  】と表記される。覚えておけよー』


「ははっ……あははははは!!!」

疲れからか、なんの前触れもなく笑ってしまった。

「マジかよ……。そんなの。ありかよ……」

面白いことするなー、最高にイカれてやがる。

ははは、やべーわ、作者。

キャラも、お前ら個性強過ぎ。

やっぱ、最高だわこの仕事。やめらんねーわけだ。

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