自分の使い途、あるいはマイミッション
2020年8月。退職・コロナ禍の新生活が始まって4ヶ月か経過した頃。とある場所で、自己紹介の文章を書く機会があった。
何が気に入らなかったのか?
何をしたいと思ったのか?
当時の僕の頭の中がよく表れてる気がするのでここに再掲してみる(一部修正あり)
広島在住、四十路男、二児の父、カウンセラー/セラピストを生業としています。
自身の好きや欲するままが他人様の希望に直結する幸せな循環をつくりたく思っています。自分の使い途を増やしたく思っています。
よろしくお願いします。
今年の春、長年勤務した職場を退職しました。
経験を重ね、知識を増やし、スキルを上げた結果、日々の生活のなかで"満足"よりも"不満" を感じることの方が多くなりました。いつの間にか、その状態がデフォとなってしまいました。
周囲に対して苛立つことが増えました。ネガティブな感情が漏れ出さぬようフタすることに使うエネルギーが増していきました。
好奇心や「変えたい」「少しでもマシにしたい」というモチベーションや使命感が強まれば強まるほどに、不全感や徒労感や苛立ちや肩こりや疲れが、ムダに増していきました。
「人様のお役に立ちたい」という思いが強まるほどに、人が嫌いになっていきました。
そんな状態が続き「ちょっともうムリだな」と思いました。「このままじゃ自分のことが嫌いになりすぎる」と思いました。
このおかしな循環を断ち切りたいと思いました。
もう一つ。これまでたくさんの方の相談に応じてきました。
たくさんの方と話をして、多くの方に共通することがあると気づきました。
「今の世の中において "相談する" という行為のハードルがメチャクチャ高い」ということです。
分からないことを訊ねる。困りごとや悩みごとや辛い気持ちを周囲に向かって表現する。感情を周りと共有する。
ただそれだけのことが、「恥ずかしい」「悔しい」「情けない」「怖い」といった自分を蔑むようなネガティブな感情によってブレーキをかけられてしまう。
「あと半年早く」「あと5年早く」「あと10年早く会えていたら、もっと楽に、もっとスムーズに、もっと短期間で、場合によっては笑いながら解決策を講じることができてたのに」
ほとんどの方が、悩みがピークに達して、思いつく限りのことを試して、二進も三進も行かなくなって、どこにも誰にも頼れなくなって、ようやく精神科(以前の職場です)の敷居を跨いでおられました。「ここまで落ちてしまったか」と、自尊心や肯定感が限界まで擦り切れてしまった状態で来院されていました。
おかしなことだと思いました。
自分だけでは抱えきれない、誰かに聞いてほしい、相談に乗ってほしい。
そんな当たり前の欲求を気軽に満たせない仕組みに、僕は苛立ちを強めていきました。
そして今まで気づかないフリをしていたことに、ようやく意識を向けることができるようになりました。
「そもそも僕自身、相談するのは苦手だな」
「ずっとそうだったし、今でもそうだな」と。
悩み相談のハードルを下げること、チョットした気がかりや不全感や悩ましさを、安心して、できれば笑いながらオープンにできる仕組みがほしいと思いました。
それが自分の望みであり、気持ちよく生きてくための条件であり、人様に貢献できる道なんじゃないかと思いはじめました。
そんなわけで、僕は以前の職場を辞め、新しい働き方について試行錯誤を始めました。
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最近、人前でお話をする機会があると、「マイ・ミッション」として、以下の3項目を掲げることにしている。
一、悩み相談のゆるライズ
一、悩み解決スキルのコモディティ化
一、悩み相談のエンタメ化
「ゆるライズ」という言葉は、コピーライターで世界ゆるスポーツ協会理事の澤田智弘さんが『ガチガチの世界をゆるめる』(百万年書房, 2020)という著書で紹介しているコンセプトだ。
本書では、 ゆるスポーツが生まれたエピソードをはじめ、 「YURU」にまつわる自身のこれまでの経験が語られています。 会社や社会が「ガチガチ」で窮屈だと感じている人、 思考が年々「ガチガチ」になっていると思う人、 スポーツが苦手な人・得意な人、 福祉に関わる人、 福祉に興味がない人、 学校の先生、 これから社会人になる人・・・、 一人でも多くの方にスポーツ、 文化、 働き方、 社会、 心のゆるめ方をお伝えしたいと思います。 だれもが柔軟で、 クリエイティブに生きるためのアイデアが詰まった一冊です。
「こうでなければならない」「こうあるべきだ」ー世の中や僕らの脳内に巣食うガチガチのルール。
疎外を生み出し、僕らが自由に行動したり、表現したり、楽しんだりすることを邪魔する「常識」「普通」という感覚。
そんなあれこれを「ゆるめ」て、誰もが自分らしく楽しく生きてける世の中に変えていこう。
「ゆるライズ」というコンセプトには、そんなメッセージが込められている。
僕はこの本を読んでメチャクチャ感動した。そして、「悩み相談」についてもガチガチのルールがはびこっていると感じた。
「僕がやりたいことは、悩み相談のゆるライズだ」
そう思った。
早速イベントを立ててみた。案内文はこんな感じだった。
「悩みを相談する」というのは、多くの人にとって意外とハードルの高いこと。
いったいなぜなんでしょう?何がハードルを上げているのでしょう?
「相談」をもっと気軽でポップなことに変えるには、何をゆるめたらいいでしょう?
カウンセラーの梶原さんが、参加者の皆さんと一緒にそんなことを考えてみます。
フリーランス(まだ似非だけど)になって約一年半。いろいろ試行錯誤はしているけれど、基本的なコンセプトは「悩み相談」あるいは「悩むという行為そのもの」のゆるライズだ。
「悩む」という行為において、「自分と向き合うこと」は大切な要素だ。成長し進化するための必須の経験とも言える。でも、それだけじゃないと思う。自分の能力や考え方やこれまでの経験では対応しきれない事態に直面した時、人は悩む。それは「変化」のきっかけだ。新しい人や新しいアイデアとの出会いの必要性を告げるサインだ。
「悩み」が生まれた時、新しい何かに出会えるかもしれないとワクワクできるようなメンタリティが欲しい。
すべての悩みをポジティブに、とまでは言わないけれど、今の世の中に溢れるネガティブな悩みの一割くらいが、気持ちの良い表現、出会い、遊びにつながるような、新しいルールや常識やスキルや場や仕組みを生み出せたらいいな、と思う。
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