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仕事がない...

2020年4月。退職の翌日から、スクールカウンセラーとして複数の学校を回りはじめた。

これ自体は、副業とは言え15年ほど続けていた仕事だったので、特に問題なく進められた。週1回やってた仕事の頻度が増しただけだ。

問題は、スクールカウンセラーがない日だ。何かしなきゃいけないことが決まってるワケじゃない。タイムカードもない。まったくの白紙だ。

スマホをつついて当時のGoogleカレンダーを見てみる。月の半分は空き日だ。ボンクラ大学生の頃に戻ったような感覚だ。

さて、なにをしようか?

僕はとりあえず、毎日、仕事があろうがなかろうが、これまで通りのタイムスケジュールで動くことにした。これまでと同じ時刻に家を出て、電車に乗る。これまでと同じ時刻に家に帰る。そのリズムは崩さないようにした。

次に、居場所だ。どこで過ごすか?

以前に行ったことがあって、なんとなく仕事してる風に過ごせる場所を巡ってみた。街中でWi-Fiのつながるコワーキングスペースやカフェなどだ。

ドリンクを一杯注文し、席について、PCを開く。特にやらなきゃいけないことはないのだけれど、とりあえず開く。周囲には同じようにPCをつついたり、勉強したりしてる人が数人いる。

「これがノマドワーカーとやらの見る景色か... 」と今っぽい雰囲気をしばし味わう。

端からは僕もノマドの一員に見えたかもしれないが、実際には違う。正規のノマドたちにはやるべき仕事や勉強があるが、僕には何もないのだ。

「なんかしなきゃな・・・」

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退職当時、稼ぎになるかならないかは分からないながら、新たな仕事についての漠然としたアイデアが5つほどあった。

①個別カウンセリング
やることはこれまでと同じ、悩みごとやストレスを抱えている方(クライアント)の相談に応じる仕事だ。

あたりまえだけど、これをやるにはクライアントが必要だ。場所とか、予約受付システムとか、料金システムとか、その他諸々必要なものは他にもあるけれど、何はともあれクライアントがいなきゃ仕事にならない。

これまでは病院を受診した方々の中から希望者を募って仕事してた。営業努力などせず、病院からもらった仕事をやってただけた。まぁ医師や看護師とのやりとりのなかに営業的な要素が入ってると言えなくもないが、たかが知れてる。

どんな風に宣伝・営業をして、僕個人とクライアントのマッチングを果たすか?それが最初の課題となる。

②講演・研修・ワークショップの開催
これらは、数は多くないけれどこれまでにも開催した経験があった。大学で非常勤講師をやったりもしてたので、人前で喋ることには然程抵抗はない。既に手元にあるコンテンツも活用できるという意味で、研修やワークショップの開催もありかなと考えた。テーマ設定や体験のデザインによっては興味を持ってくれる人もいるだろう。

講演はちとハードルが高いと感じていた。だって無名の中年カウンセラーの講演なんて、誰が聞きたいと思う?

研修やワークショップは大きく「専門家向け」と「一般向け」があるが、僕としては後者のコンテンツを増やしたいと思っていた。なぜそう思ってたのかは、また別のところで書こうと思う。

③心理検査を活用したサービス
心理検査も使えるかなと考えた。

例えば、進学塾とコラボして、知能検査をやってみるのはどうだろうか?ただスコアを知らせるだけでなく、細かな特徴まで精査して、生徒ごとの得意不得意や最適な学習スタイルといった、ニーズに応じたアセスメントを返す仕事だ。検査自体が結構手間だが、例えば心理学専攻の大学生を集めて、検査スキルの向上を目的としたレクチャーをする代わりに、安いバイト代で検査を代行してもらったりするのはどうか。

例えば、簡単なストレスチェック(あるいはうつとか不安とかの質問票)に定期的にスマホとかで回答してもらって、データの記録と分析をする。何もなければそれだけだが、異常な変化の兆候があった場合にはこちらから連絡して、やりとりする。必要とあらば相談や助言も行うみたいなサービスはどうか?

ただこのあたりは既に、デジタルデバイスを介して健康関連データを収集・解析して、適宜フィードバックを送るサービスやアプリがどんどん開発されてる。

アナログネイティブな僕がやるとすれば違った切り口の価値を見出す必要がある気がする。

④メンタルヘルスリソースマップの作成
僕の住む地域周辺にある病院、クリニック、公的機関、その他民間の組織などを巡り、取材し、情報をまとめれたらいいかなと考えた。

最近はどこもホームページやSNSで情報発信したりしてる。ユーザー側からの感想や評価についての情報もあるにはある。大半は「あの病院は最悪だ」的なネガティブ情報だったりするが。ある程度の専門知識と経験がある者のキュレーションを介した情報が、食べログくらいの気楽さで参照できるコンテンツをつくれたら、ニーズはあるんじゃないかと考えた。

とりあげるリソースは別に医療福祉領域に限る必要もない。めちゃくちゃ聴き上手なママがいるスナックとか、一口食べれば癒されるシフォンケーキの店とか、ストレス軽減につながるリソースならなんでも構わないかなと思ったりもする。

⑤心理学にまつわるコンテンツ制作
一般の方でもおもしろく読めて、日常生活にも役立つような文章を書いて、ブログとかメルマガみたいな形で発信するのもアリかなと考えた。文章書いたり、調べ物をしたりするのは苦ではない。量をこなせば文章力や発信力も上がり、何より僕の存在を知ってもらうきっかけになるかなと。

他にも小さなアイデアはいろいろあった。

ただ、やはりここでも目の前には「コロナ」が立ち塞がっていた。

「人に会うのは極力避けましょう」
「Stay Home」

そんなキャッチコピーというか圧力が世の中にどんどん広まり、強まり、浸透しつつあった。新しいことを始めるために、新しい出会いを求めて動き回ることは憚らられた。

いかんせん僕はビビリなのだ。

そして、もっともやり慣れた個別カウンセリングさえも、やりにくい雰囲気があった。カウンセリングとは「密な部屋で、密に会って、密にお話する」行為だ。これ以上「三密」な仕事はそう多くない。

僕は、一人でもシコシコ進められることから始めることにした。

「とりあえずチラシをつくってみよう」
「あと研修やワークショップのプランニングとパワポをつくってみよう」

この二つが、僕がプチフリーランスとして取り組む最初の仕事となった。

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