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ドンマイ。 - 『今夜もウェブで会おう』 (第16通目)

「心の家」から友達を出してあげた話

区切りバナー「将軍川」

やっほ、梶さん

最近調子どう?
うちはこっちの友達とちょっと喧嘩をしてしまって、前話した時はまだ頭がフワーッとしてたんだよね。

どちらかといえば、喧嘩した、というよりは、ウチが一方的に傷ついたといったほうが正しいのかもしれないけど。

友達がストレスで体調を崩したっていうから、果物を窓まで届けたり、メッセージで「大丈夫?」SMSで1日おきくらいに確認したんだ。

全然返信がなかったまま数日後、元気そうにしているその子をパーティーで見つけた。
その子に「返事がなくて心配したんだよ? メッセージはちゃんと届いていた?」と確認したら、その子は口を開くなりこう言った。

「あのね、ちょっと、やりすぎ」

心配してくれてありがとう、や、返事ができなくてごめんね、は一切なかった。返信をしなかった理由も「緊急以外の用事には返事をしないことにしたから」ということだった。
「『治ったよ』って一言くれれば安心したのに」と言えば、「ヨーロッパでは自立した人が好かれるんだよ。彼氏だって、そんなに頻繁に書いてよこさない」と返されたときは、いろいろな感情が一気に吹き出して、何も言えなかったんだ。

親切でやったことが、相手にとっては完全な迷惑行為だったこと、そしてそれが大切な友達との間に起きたことが、たまらなくショックだった。

その日の料理は、あんまり味がしなかったな。

「胸が痛い」とは良くいったもので、肋骨あたりがきしんだり、胸に何か刺さってるような感覚(実際に経験したことないけど)が1週間くらい続いた。本当に痛いから、すこし上半身を庇った生活をしてたっけ。

一人でぼんやり過ごす中で色々考えたんだ。
友達の形も文化圏での多少の違いがあるんじゃないかって。

日本は「ソト」と「ウチ」の文化だってよくいうよね。
ウチの場合は、友達は「ウチ」だ。
大切な友達は、「心の家」のメンバーってとこかな。

「心の家」は、自分の心の間にが武装なしに安心できる心の居所のことで、「この人なら自分を分かってくれる、信頼できる、自分をオープンにできる」と思えた友達を招き入れる。
その人たちを、家族のように接するんだ。もしかしたらこれは、ウチ特有なものかもしれないけど。

家族同士なら、お互いを頼りにするし、当然何かあったら心配する。困った時はお互い様。
けれど、その子はそれを「重たい」「依存的」と思ったみたいだった。

思えば、ヨーロッパ人は個人主義の人が多く、プライベートやプライバシーを大事にする。
その子は人気があって、いろいろな人からひっきりなしに連絡が来るタイプだから、単純に一人の時間に飢えていたのかもしれない。
きっとその子には心のテリトリーがあって、ウチは境界線に気づかずに踏み入ってしまった。本当は殴りたいほど我慢の限界だったけど、友達だから既読無視と「やりすぎ」だけで済ませてくれたのかもしれない、なんてことも考えたりした。

とはいえ、ウチが傷ついたのは今回が初めてじゃない。
その子はズバッと思ったことを言うんだ。ドイツ人的な気質って言えば、まあそうんだろうけど。

きっと「文化の違い」だから、怒りや悲しみは腹に収めるのが、世の中が理想とするお手本みたいな人間のやり方だ。

でもウチはそんな器用な人間じゃない。

不器用な人間なりに、大切な友達をウチの「心の家」の一員として扱っていただけだ。決して「依存」とは違うんだって、冷静になった今なら自信を持って言える。
だから今回こそは、自分を守ってあげなきゃダメだっておもった。

これからもその子とは友達ではいるし、同じプロジェクトで協力し合う。
それでも、その子をウチの「心の家」から出してあげることにした。これから一緒にいる時は、ちょっとだけ心の武装をする。
お互い近くにいることで、ありのままの姿でいられないのなら、少し離れていたほうがいい関係なんだと思う。

ヨーロッパにきてから初めて「心の家」から誰かがさよならをしたから、まだちょっと心が傷いけど、とりあえず元気。
だから心配しないでいいよ。

ところで、梶さんは、似たような経験をしたことがある?

将軍川



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家を出たら7人の敵がいる

区切りバナー「梶」

将軍川くんへ

そうだなぁ、ちょっと前に、人を信用することについて、チャットで話したじゃない?
その時に、思い出したことを、覚えているうちにお返事しようかなと思って。

反則技ってあるけど

・反則技を使う人
・反則技を使わない人

二種類いる。

人間関係も同じで、相手の気持ちがわかったら、普通は「そうなんだなぁ」と思ったり、共感したりして、普通に流していくようなものだと思うんだけれど、
ときどき、他人の気持ちを理解していることを利用して、傷つけてくる人がいるんだよね

ほんの小さな言葉なんだけれど、胃がちぢみあがるようなタイミングで、こちらの存在を否定する。
で、小さい言葉一つでこっちが混乱している間に、完全勝利を収めちゃうんだよ、そういう人って。

まあ、同じケースかはわからないけど、割といるタイプだと思う。
外からは立派に見えて、人間関係も上手な人が多いけど、冷静に見ていれば、そういうものはプライドを保つためのハリボテだってわかるようになる。
(同じケースだとは言わないよ)

やられた時は
「えっ、今凄い匂いがしたけど、あなたの口臭……?」とかさ、ガチで戦闘するしかないんだけど。

ほんとに、家を出たら7人の敵がいるよね。
わたしらみたいに変わった人間が、武装解除した状態で、そのまま受け入れられる場所ってなかなかない、と思います。

胃は大丈夫なの?
……って、わたしが心配しても、良くならないんだろうなぁ。
ドンマイ。

まあ、

・反則技を使わないと心に決めた人

もいるとは思う。
でもわたしは、1回裏切られたら、二度と本当には心を許せないね。
心を許した瞬間に、また付け入ってくるかもしれないからなぁ〜

いやはや、世の中敵だらけでござる!

では、また。




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🍬おまけ

アイコン_かじ

なんとなく冴えないときの特効薬ってあるんだよね。「自然の中に行く」「小説を読む」「音楽を聴く・作る」がそれで、たちまち回復するから、「なんでこんなにいいことを、もっとやらないんだ!」って思うのに、ちょうどいい時に出てこないんだよね。

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