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バスタの旅情

 バスタ新宿を利用しました。深夜バスに乗り、豊橋へ向かうのです。

 普段使い慣れております新宿駅ですが、バスタ新宿はなかなか訪れません。前回利用した高速バスは、八重洲口の屋外でしたから、バスタ新宿の利用は今回が初めてであります。

 深夜便ですから、大変です。出発は23時55分。それまで時間を潰さねばなりません。おまけに、スマートフォンの電池はもう切れんばかりに減っております。駅構内のベックスコーヒーにて、夕食兼夜食のカレーを食し、ありがたく電源をいただきました。

 満を侍してバスタのエスカレーターを上りますと、モダンなコンクリート製の乗降口が現れました。高速バスがいく台もいく台も、その巨体をターミナルに滑り込ませてゆきます。排気ガスの酸っぱい風を吸いながら四階に上がりますと、そこは旅情に満ち溢れた空間でありました。

 それほど大きくはない空間に、巨大なスーツケースを引っ張る若者と外国人旅行者の多いこと多いこと。友達同士での旅行でしょうか。制服姿にミニーマウスのショルダーをぶら下げた方々も多数見受けられました。旧国鉄の駅舎を思わせるレトロなデザインの床と、熱気にあふれた会話。ひっきりなしに鳴るアナウンスに、バスの到着を告げる職員たちの叫び声。

 極めつけは、デイリーヤマザキでしょう。完璧な陳列の店内をぐるりと回れば、歯ブラシにタオルとハンカチ、そしてチップスター。ちょうど歯ブラシを忘れていた私は、クリニカの歯ブラシを購入しました。

 バスタ新宿に満ちていたのは、私が小さな頃に憧れた、旅の雰囲気でした。両親の持っていた雑誌に載っていた、夜行列車内のフィルム写真と待合室の雰囲気です。新幹線や飛行機では味わえなかったものです。

 新幹線は高いです。飛行機も、LCCの台頭はありますが、やはり高額です。夜行列車の無い現代、手軽で安い旅を求める人たちが、バスタ新宿に集まっているのです。バスタ新宿を造った人たちも、これほど利用されるとは思わなかったでしょう。需要はまだまだあるのだと思います。中野、八重洲のバスターミナルも大勢の人であふれていますから。

 バス旅。深夜のサービスエリアも楽しいです。


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