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卒業制作『舞女卵』について解説

こんにちは。こんばんは。おはよう。

約1ヶ月ぶりに書く記事はnoteお題の「卒業制作」についてです。
現在世間を騒がせているコロナウイルスによって発表の機会を奪われてしまったクリエイター学生の為に卒業制作を発表する場を設けようという趣旨で募集しているお題らしいです。

そのnote運営さんの記事をちらりと読んだ時、自分にも卒業制作なるものがあったことを思い出しました。




あれは、確か42Pの漫画作品…。


僕が芸術系の大学に通ってた頃に使っていたUSBを漁っていたら、出てきてしまいました。
痛々しい扉絵が。
丸々42P分のコミックスタジオのデータが残っていました。


こうも堂々と残っていたのを発見してしまったからには、これはもう、発表するしかないなと思い晒すことにしました。
4年前の僕が知ったら首を吊ろうとするかもしれません。
それくらい人前に出したくないくらい恥ずかしい作品なのです。


何が恥ずかしいかというと、「読者を楽しませることを何一つ考えていない」という点です。
4年前から自覚はしていました。
でも、「もう今の俺にはこれしかない」とも思い、思い切って描くことにしました。第一、卒業制作の締切がすぐそこまで迫ってきてしまっているのです。
これを逃したらもう留年しか道はありません。
ならもう描くしかない。
もしくは書くしかない。

それが大学に通う学生に課せられた使命なのだから…



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ストーリーは就活に大失敗し自分の人生に絶望した大学4年生の「土師ノ 紗智」が自殺しようとするところから始まります。
出だしから最悪ですね。

何度も自殺未遂を繰り返し、今度の今度こそ自殺を成し遂げようとしたところに謎の生物が現れて、そいつに促されるままにすると小学生の誰かに転生している…。

就活しか頭にない紗智は「しめた!」と思い小学生の身体を思う存分使ってぶっとんだベクトルで勉学に励み、薔薇色の人生を歩もうとする計画を実行に移そうとするが…

実は紗智は小学生に転生したんじゃなく、現に生きている小学生の女の子と自分の魂が入れ替わっただけいうことが発覚…

魂を入れ替える前の小学生の女の子、『園田 彩良』の魂が紗智の目の前に現れる…

この彩良という女の子は、自分の絶望的な人生をなすりつけるために、自殺しようとしている紗智に魂を入れ替えさせたのだ…

事実に気付き、父親に命を奪われかけるがなんとか脱出して無事終わり…
みたいなストーリーです…


簡単に纏めるとこんな感じですが、改めてみると全然意味わかりませんね…

もっともっと簡単に言うと『女子大生が人生やり直そうとしたけど痛い目見て駄目でした。しゃーないから今を生きてくしかないじゃない』という話です。

夢も希望も無い!


これは当時同じく大学4年生である自分のイメージを女体化して描いています。何故女体化したかというと「やってみたかったから」という単純な理由からです。ちなみに自殺しようとはしてません。「漫画で死んでやる」とは思ってました。


死にたかった。
生まれ変わりたかった。
小学生辺りからやり直したかった。


当時の僕はそんなことばかり思ってました。
芸術系の大学に通っていながら何も成果が出せなかった自分が嫌で嫌で仕方なかったんです。


「こんなことなら勉強のことしか頭にない親の言いなりになるロボットのような子供になってしまえばよかった」

「今の記憶のまま小学生からやり直せたらきっと『神童!神童!』と持て囃されるだろうな」


そんなゲスな考えからネームはあっという間に完成しました。
講師にネームを提出したら作風が好みだったのか大絶賛でした。
しかし僕は「やってしまった感」で胸がいっぱいでした。

実はこのネームを提出する前、もう1本話を練っていたんです。


ある日悪魔と契約した弱気な高校生が超能力を駆使して今まで自分をいじめていた人に仕返ししていくんだけど途中で大切な友情に気付く』みたいな話です。

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悪魔のキャラとかを1から設定して現代ファンタジーみたいな感じにしました。

今の今まで『現代』の、『その辺に居そうな普通の人』ばかりを創作として描いていたので、「一皮剥けたい」というチャレンジ精神で描いていました。

『ストーリーは二の次。キャラを全面に押し出して描こう』
『その辺に居なさそうなのをキャラをして描こう』
『現代だけど魔法とかバンバン出るファンタジーを描こう』
と思いながら描いてました。

しかし講師は微妙な顔をして読み、最終的には頭を抱えて言いました。



奇妙な世界観を出したいのは分かるんだけど他がさっぱり意味が分からない…」と。


この悪魔はどうしてこの主人公に自分の力を渡そうとしたの?
この主人公はどうしてここで悪魔を助けようとしたの?
この悪魔はここで何を考えていたの?
そもそも悪魔は何故人間界に来たの?


その理由を説明しようとすると、圧倒的にページ数が増えてしまう…。


そもそも、僕は、どうしてこれを描こうと思ったのか…


もう正直、悪魔+現代ファンタジーというテーマを今どきやっている自分が恥ずかしくなってきた…


何年前の話だよ… もうこのジャンル2000年代初期にやりつくされたじゃん…


てかこれもうデスノートのパクりみたいなものだろ…



今、これを描く必要性が、どこにあろう……



こんなのを仮に持ち込んでも、「キミ古いネタ描いてるね」で終わっちまうんじゃないか…?



そして僕の中で、ポキッと1本何かが折れた。

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そして今の今まで胸の内に秘めてたものが一気に溢れてきた。

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「あぁ、またやってしまうのか…」と思いつつも、一気に描いた。

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そして生まれたのがこの作品、『舞女卵』なのである。




僕には自分が不安に思っていること、怖いと思っていること、被害妄想、妬み、憎しみ、殺意などのネガティブ要素をふんだんに詰め込んで垂れ流すという悪癖を持っている。
絵にしろ文にしろ、オラァッって感じに描き殴って、出来た物を見て、何とも言えなくなる行為を小さい頃から続けてきた。


ネガティブなものなら、いくらでも描けるという謎の自信がある。


しかしそれは決して人を幸せにしないから、なんとか明るくしようとしてきた。


それを踏まえての『悪魔+現代ファンタジー』だったのに



結局ネガティブに一蹴されてしまった。
また自分のネガティブで染め上げてしまった。


ガーッとネームを描く。


俺なんか死んでしまえばいい。
死んで美少女になりたい。
大したことしてないのに崇められたい
一瞬で天才になってみんなを見下したい
子役の裏事情はとことん暗闇であって欲しい


そんなメッセージが一気にボボボボと流れ出る。
『悪魔』のネームは1ヶ月くらいかけたのにこのネームは2、3日で終わってしまった。
実家のような安心感があることもまた嫌だった。


しかし講師は絶賛した。

「いやぁ凄いよ!ことま君らしさがビンビンに伝わってくる!これだよこれ!!」


そんなこともあって描き上げるしかなくなった。
やるからには徹底的にやるしかない。
正直嫌々ながらもスカッとしている。
ゴールが見えたという安心感もあるし。


製作は困の難を極めた。
元から凝り性ということもあって、何かと描き込みたがる癖もある。
しかし時間が圧倒的に足りない。
しかし「なんとかなるだろう」と現実を見ないのでどうにもならない。
スケジュールがおしりに近づく頃にようやく妥協を覚え、決して上手いとは言えない理想とは程遠い原稿が出来上がっていく。


そしてなんとか無事完成させ、提出した。


出来た作品は必ず卒展に出さないといけない決まりがあった。
皆思い思いの装飾を施し自分の絵の周りを各々独自の幻想世界を構築していくが僕は印刷した原稿のファイルをデンと置くだけで完了した。


他の皆がやっているような「感想ノート」みたいなものも設置しなかった。
寧ろこんなものを見て欲しくも無いし、感想なんてもっての他だった。


その後、卒業式にて、僕の作品がゼミ賞を受賞した。
僕の描いた扉絵がでかでかとスクリーンに映し正された。

恥ずかしさで前が見えなかった。

だっておっぱいだよおっぱい。

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おっぱいがスクリーンにでかでかと……ひえぇ…


何より、この作品で賞を取ってしまったのが凄く恥ずかしかった。



確かに僕は頑張った。



何度も何度も講師に提出し、長々と話し合った。


本当は紗智が親父に殴り殺されて終わるエンドを何とか救いのあるものに持って行った。



そんな努力を講師達が認めてくれたのだろう。



でも、なんだかズルしたような罪悪感でいっぱいだった。



本当に描きたいもので賞を取れなかったからだろうか。


例え自分が考えているより多くの人が、僕のネガティブ部分を称賛していたとしても、僕はもうこんなドロドロしたようなものを描いていこうとは思わなかった。


その後、僕は絵とは関係のない専門学校へ通い、卒業し、就職し、現在に至る。


一度は絵や漫画を人に見せることを丸っきりやめてしまったこともあったが、何故か今はぽつぽつと復活しつつある。

仕事の忙しさは日に日に増していく。

これから先、どれだけ絵に自分を注げるかは分からない。

いつ絵を描くことをサッパリやめてしまうか分からない。
それは明日なのかもしれない。

そんな不安定な中で、友人が1人も居ないどうしようもない孤独な社会人生活の中で、僕はまだ何かしら描いてます。

(おわり)

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