カイ書林 Webマガ Vol 14 No2

関東は河津桜が見頃となりました。
このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。

【新刊案内】

・杉本俊郎編集:内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット

【好評発売中】

1 医療者のためのリーダーシップ30 の極意 Sanjay Saint&Vineet Chopra,翻訳:和足孝之

2 長瀬眞彦著:東洋医学診療に自信がつく本

3 梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動― 臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか?ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17

4 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

5 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

6 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

7 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

8 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」

9 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

10 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)


【カイ書林図書館】

■2023年度ジェネラリスト教育コンソーシアムがオンラインで開催されます。

テーマ:医療現場に必要なリーダーシップスキル
とき:4月1日(土)12:30~14:00
Editor:和足 孝之(ミシガン大学。島根大学)坂口 公太(島根大学)
Guest Editor: 田久保 善彦(クロービス経営大学院)
主催:㈱カイ書林
共催:島根大学医学部附属病院総合診療医センター
参加費:2000円

第19回を迎える「ジェネラリスト教育コンソーシアム」の今回のテーマは「医療現場に必要なリーダーシップスキル」です。コロナ禍や戦争、AIといった日々目まぐるしく変化し不確実な時代だからこそ、私たち一人ひとりのリーダーシップが試されています。挑戦してみたいが少し勇気が出ない、仲間が欲しいと思っている、そんな医療現場の人にとってこのコンソーシアムが「武器」になれば幸いです。

一緒に今後の医療現場に必要なリーダーシップについて考えてみませんか?私たちの行動一つで、未来は変わるかもしれません!

申し込みはこちら


■2023年度第1回Choosing Wisely Japan オンラインレクチャーのご案内

https://choosingwiselyjapan.peatix.com/

講演:Choosing Wisely Japan代表 小泉 俊三 先生
4月8日(土)14:00~15:30
COVID-19 の教訓とChoosing Wisely Japan の新しいチャレンジ
——— 持続可能な社会と持続可能な医療のために———

方法:オンライン(Zoom)講演と質疑応答

Choosing Wisely(賢明な選択)は、医療者と患者が対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)を「賢明に選択」することをめざす、国際的なキャンペーン活動です。Choosing Wisely Japanは、日本でChoosing Wiselyを推進するため、2016年より活動しています。

COVID-19は世界の医療に大きな影響を与えました。今回のセミナーでは、内外の最新動向を踏まえつつ、COVID-19から得られた教訓と、今後のChoosing Wisely Japanの活動について、代表の小泉俊三先生が解説します。ふるってご参加ください。

主催:Choosing Wisely Japan
参加費:1,500円

■全国ジェネラリストリポート

中小病院を基盤とした総合診療の展開をめざす

石丸裕康 関西医科大学総合診療医学講座・関西医科大学香里病院総合診療科 

私事であるが、一昨年の10月に約30年勤めた天理よろづ相談所病院を辞し、関西医科大学に異動した。勤務先は、大学関連施設ではあるが、199床の小病院で、そこを拠点として総合診療専門医養成プログラムを展開することがミッションである。

ここ数年の医療を巡る環境の変化の中、総合診療の理念に沿った医療を展開する場として、中小規模の病院に可能性を感じていたことが異動を決めたひとつの理由である。また必要性が叫ばれながら、志望者が伸び悩む総合診療の領域について、大学という場で多数の若い学生・研修医にリーチできるチャンスと考えたことも、理由であった。

日本の医療提供体制が、高齢化や働き方改革などさまざまな要因から変化を求められていることは周知だが、高度急性期病院や、プライマリ・ケア/在宅医療のあり方のみでなく、その中間となる病院の役割が重要であると考えている。日本の病院の7割は中小病院で、ベッド数ベースでみても半数が中小規模の病院に属している。

最近のヘルスケアの現場を観察し、またコロナ禍での急な医療状況の変化も経験する中、中小病院の役割が重要かつ、その質向上が求められていることを実感してきた。大規模病院には紹介しづらい診断困難例への対応、誤嚥性肺炎、尿路感染、心不全など高齢者に頻発する問題のケア、軽症・中等症の救急医療y、大規模病院から地域へのケア移行でのハブとしての役割(リハビリ、緩和ケアなど)、地域包括ケアとの連携・統合をより意識する必要のある多職種連携など、現代の医療・ヘルスケアの抱える問題の多くが中小病院の現場に集約されている。

しかし従来この規模の病院のあり方の議論は十分ではなかった。私的病院が多く公的施設が少ないため医療システムにおける位置づけが難しいことや、一般に教育機能は不十分であることが多く研修医・専攻医の教育での役割、アカデミックな発信は乏しかったことなどが理由としてあげられる。

一方で、総合診療の領域では、この規模の病院の役割に注目した動きが目立ってきつつある。病院家庭医という役割の提唱(1)、コミュニティホスピタルの活動の展開(2)などこの規模の病院の役割を積極的に見出し、その実践・教育・研究についての議論がはじまっている。

私としてはこの流れに乗り、大学附属の施設としての役割を活かしつつ、中小規模病院の役割を、臨床実践においても、アカデミックな立場からも追求したいと考えている。

(志を同じくする仲間を募集しています! 少しでも関心のあるかた、ぜひ連絡ください)

(1) 病院家庭医: 新たなSpeciality 森川 暢 , 松本 真一 (編集), 佐藤 健太 宇井 睦人 (監修) 、南山堂、2020
(2) https://cch-a.jp/


■マンスリー・ジャーナルクラブ

国内の鍼灸治療に関連する有害事象の報告

寺澤 佳洋 弘池会 口之津病院 
Nobutatsu Furuse, MS, LAc
A Multicenter Prospective Survey of Adverse Events Associated with Acupuncture and Moxibustion in Japan.
Med Acupunct. 2017 Jun 1; 29(3): 155–162.Published online 2017 Jun 1. doi: 10.1089/acu.2017.1230

→https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5512321/

内容の要旨: 国内の鍼灸治療に関連する有害事象の報告である。

背景: 日本式の鍼灸治療に関連する有害事象に関する前向き調査はわずかしかなく、それらは1つの大学で鍼灸治療クリニックでのみ実施されていた。

目的: 日本の教育施設で行われている鍼灸の安全性を評価する。

方法: 2014年10月から2015年6月までの各施設で5~7か月間実施された。国内の鍼灸教育機関が運営する8つの施術所に通院する患者が対象になっている。主要アウトカムは、治療中と治療後のインシデント報告に基づく有害事象の数であった。

主な結果: 232人の治療家(臨床経験年数:9±10年(平均±標準偏差))が参加し、2,180人の対象者が治療を受け、合計で14,039回の治療が行われた。有害事象は、全数で、847件(6.03%)が報告された。その内訳は多いものから、皮下出血と血腫 (370件、2.64%)、不快感(109件、0.78%)と刺入点の残存痛(94件、0.67%)であった。灸治療関連の有害事象では、火傷(24件、0.17%)を認めた。本研究において、感染症や重篤な有害事象は報告されなかった。

結論: 報告された有害事象のほとんどは、軽度で一過性のものであり、日本の教育施設で行われた鍼灸は安全という結果であった。ただし、サンプルサイズが小さすぎたため、リスクを明確に定義するには至らない。

コメント:この論文は、国内での鍼灸治療における有害事象の種類や件数・頻度を示している。有害事象は被験者に生じる好ましくない様々な医療上のイベントであり、必ずしも当該治療との因果関係が存在するものではないことに注意が必要である。
 鍼治療の有害事象として気胸【参考文献1】や折鍼【参考文献2】などが報告されているが、本研究ではこれらの重篤な有害事象が示されていない。なお、有害事象の発生率として、手技等は異なるが、ドイツでの229,230回の治療をもとにした研究【参考文献3】があり、気胸発生は2件(0.001%)であった。

【参考文献1】BMJ Case Rep. 2021 Mar 1;14(3):e241510. doi: 10.1136/bcr-2020-241510. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33649032/

【参考文献2】Surg Case Rep. 2021 Feb 17;7(1):51. doi: 10.1186/s40792-020-01065-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33595766/

【参考文献3】Forsch Komplementmed. 2009 Apr;16(2):91-7. doi: 10.1159/000209315. Epub 2009 Apr 9. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19420954/

■「内科専門医が教えるジェネラリスト診療ツールキット」を書き終えて ―杉本俊郎先生編集者インタビュー

下記よりご覧ください。


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