汀の恋人

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 折り紙の国のお姫さまと人魚の少年は恋をしていました。銀色の尾をひらめかせて泳ぐさまに、紙吹雪の中で微笑む姿に胸を高鳴らせ、互いを夢に見ました。
 一緒に暮らせたなら、どんなにか素敵でしょう。涙を流すことのできないお姫さまの代わりに少年が泣き、涙が涸れてからふたりで笑いました。
 陸で生きられない少年はお姫さまに珊瑚や真珠を贈り、お姫さまは切り紙細工やお菓子を乗せた船を波打ち際に浮かべました。


 お姫さまの裾が破れて黄ばみ、人魚の鱗がひび割れて泳ぐ速度が落ちても、ふたりは恋をしていました。海水を拭って手を繋ぎ、しあわせなキスをしました。
 ふたりの想いはこれからもどこまでも、歩き泳いでゆくでしょう。――自由に!


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「Twitter300字ss」企画参加作品 第67回/お題「泳ぐ」

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