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それ正論?俺、正論嫌いなんだよね4

「癇癪起こしてかわいいで済むのは、せいぜい小学生までだよ。」

 「さあ‥俺と一緒に大人の階段上ろうか?」

 『WIND BREAKER』蘇枋の言葉です。



 弘前大学の疫学調査によると、2013年~2016年までの5歳児発達健診を実施したところ「自閉症(ASD)」の有病率は、3,22%であるという結果が出ました。

 他の病気同様「自閉症」の有病率にも男女差があり、男の子の有病率は、女の子の約2倍であるとされています。


 「自閉症」がどのような原因で発症するのかの答えは現代科学ではまだ出ていませんが、遺伝が関わっている事は確かであるという結論が出ています。

 デンマーク・スウェーデン・イスラエル等の出生児200万人を対象にした調査では、遺伝が関わる確率が80%であるとされています。


 アメリカのマウントサイナー医科大学の研究では「自閉症」発症に関わる遺伝子は、102個に及ぶ事がわかっています。

 この研究では「自閉症」の発症に関わる遺伝子が脳の初期段階から活性化する事や、他の遺伝子の活性を促したり、脳の神経細胞の情報伝達にも関わっている事が認められました。

 「自閉症」の特性が、多岐にわたる事も、上記のように遺伝子が複雑に脳に作用しているからであると推測する事が出来ます。



 完治する事は現代科学では困難な「自閉症」ですが、他の病気と同様「早期発見」「早期介入」が、病気(障害)の進行を緩やかにする、否、社会の中で生きていくソーシャルスキルを獲得する為に大切となります。



 アメリカでは「自閉症」の診断に、遺伝子検査を行っています。

 ブラウン大学の調査によると「自閉症」と診断された17%の人は、遺伝子検査を受けたと報告されています。

 また、遺伝子検査を受けた人は、検査を受けていない人と比較し、1,9歳程早期に「自閉症」と診断されています。


 私自身、10年近く「自閉症」の子ども・家族を相手に仕事をしてきていますが、遺伝子検査を受けたという人は、1人もいません。 

 「早期発見」「早期介入」を実現させる為にも、遺伝子検査の比率を上げていく事も、選択肢の1つであると感じます。




 かつては「親の愛情不足」が原因であるとされてきた「自閉症」ですが、全く同じゲノム(遺伝情報)を持つ一卵性双生児で90%の発症率がある事や、特定の家系で目立って発症する事等が明らかになるにつれ、現代では遺伝的要因が大きいと考えられています。


  ①妊娠初期の喫煙は、自閉症の発症リスクを1,4倍高める

  ②夏に妊娠した場合の発症リスクは、秋に妊娠した場合の2倍になる

  ③父親の年齢が10歳上がるごとに、自閉症の発症リスクが2倍になる



 上記の様に様々な視点からの研究が進められている「自閉症」の原因ですが、注目すべきは、父親の高齢化でしょう。

 社会が成熟してくると結婚年齢は、上がっていきます。

 40代後半や50代で父親になる事も、珍しくない時代となってきています。


 あまり知られていませんが「自閉症」の子どもに見られる遺伝子変異の4分の3は、父親に由来する変異です。

 そして、父親の年齢が高くなる程、その遺伝子変異が生じる可能性は高まります。



 父親の高齢化により「エピゲノム変異」が精子に生じやすくなります。

 「エピゲノム変異」とは、DNAの塩基配列そのものは変化しないが、DNAを束ねるヒストンというタンパク質に特別な化学変化が生じる事により、その部分の遺伝子の働きやすさに変化が生じる現象の事を言います。

 父親の年齢が高くなる程、精子のDNAやヒストン等の分子に、上記の様な化学変化が積み重なり、その結果として、子どもの神経回路の形成過程に必要な遺伝子群の働きが変化しているのではないかと推測されています。




 「自閉症」と診断されるのは、3歳の子もいれば、6歳になってからの子もいます。

 5・6歳の頃には、子どもの発達の大部分は、済んでしまっています。

 もし「自閉症」に関わる目印となる遺伝子がみつかったら「早期診断」「早期介入」が可能になります。

 


 医療・福祉・教育等の分野で「自閉症」と関わって仕事をしている人の殆どが、実際はそれぞれ原因や仕組みの異なる別々の障害を「発達障害」と呼んでいるのが現実です。

 複雑に絡み合った糸を解きほぐし、そこに潜む要因の1つ1つを明らかにする取り組みは、まだ始まったばかりです。



 そのような中でも「自閉症」を持つ子どもや親に意見を伝える事はいけないという空気は、壊した方がいいと思います。

 自分の子どもが楽しそうに遊んでいるおもちゃを、突然「自閉症」を持つ子どもに横取りされた姿を目撃したら、あなたはどう思うでしょうか?

 「自閉症」だからという理由で、飲み込まなければならないという状況は、私は違うと思います。


 「子どもがいるから」という理由で、何をしても許されると思っているかのような親の言動に、私は嫌な気持ちになった経験が幾度もあります。

 「この子は自閉症だから」と理解を求める事は大切ですし、周囲の協力も必要です。

 しかし「自閉症だから」といって何をしても許されるわけではありませんし、他の子どもや大人が何も言う事が出来ない状況は、違う事である事も併せて主張していきたいです。




 「大人になるということは、人の思いに寄り添えるということだ。それには、想像力と経験がいる。」

 「よかったね。階段1段くらいは、上がれたんじゃない?」

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