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味噌をつくることの成果

実は私、発酵プロフェッショナルなる資格をとったことがありまして。そんなこんなで、自宅で味噌をつくる教室をやっていたことがあります。仕事というより趣味の延長線上ですね。

何度か開催する中で、人によってつくるスピードがかなり違うことがわかってきました。中盤以降、作業進度にかなり差が出るので、ゆっくりな方はさりげなくお手伝いして、みんなの進度を合わしたりしていました。

味噌を作る工程を簡単に説明すると、

1. 煮大豆をつぶしてペースト状にする
2. 麹と塩を混ぜる(塩切り麹)
3. ペースト状の大豆を作業台に広げ、ドーナツ型にする
4. ドーナツ型の中央に塩切り麹を適量入れ、大豆と塩切り麹を混ぜ合わせる
5. 4の作業を何度か繰り返し、すべての大豆と塩切り麹を混ぜ合わせる
6. 途中で水(大豆の煮汁でもOK)を加え、全体をしっかり混ぜ合わせる
7. 山状にして、ペタペタと叩くことで空気を抜く
8. ソフトボール大のボールにする
9. 保存用の樽にボールを投げ入れる
10. 空気が入らないよう、手のひらでぎゅっと押しながら詰める
11. サランラップをかけ、空気の隙間ができないようぴったりとくっつける

こんな感じです。泥団子をつくるようなものなので、決して難しくありません。では、なぜ作業進度に差が出るのでしょうか。

それは、成果への意識の差ではないかと思っています。味噌づくりの場合、成果は味噌を仕上げることです。

作業が早い人は、

1. 煮大豆をつぶしてペースト状にする
2. 麹と塩を混ぜる(塩切り麹)

の工程はわりとていねいに行うのですが、

3. ペースト状の大豆を作業台に広げ、ドーナツ型にする
7. 山状にして、ペタペタと叩くことで空気を抜く

のあたりはさくさく進めます。

作業がゆっくりな人は

3. ペースト状の大豆を作業台に広げ、ドーナツ型にする
7. 山状にして、ペタペタと叩くことで空気を抜く

の作業にこだわりがあり、ものすごく美しいドーナツや山をつくったりします。

味噌を仕上げることが成果だと思っている人は、ドーナツや山の造形にはこだわらないけれど、大豆をていねいにつぶすとか、全体をまんべんなく混ぜ合わせることは時間をかけてもていねいにやった方がいいと判断している人が多いです。それが味噌の仕上がりを左右すると考えているのだと思います。

これって、仕事でも同じことがいえる気がします。常に「成果がなにか」を考えている人は、重要なことと重要でないことを判断して進めようとします。プレゼン資料ひとつをとっても、クライアントの面々を思い浮かべながら、力の入れどころを調整するわけです。そして、時間というリソースだけはすべての人にとって等しく、時間は命そのものだと理解している人が多いのではないでしょうか。

でも、ここでひとつことわっておくと、実は、味噌教室での成果は、味噌を仕上げることではない可能性があります。

もし、味噌をつくるプロセスをたのしむことが成果なら、正円のドーナツ型をつくり、富士山型の山をつくってニヤニヤするのが正解です◎ スーパーでいくらでも買える味噌をわざわざ手づくりするのだから、成果は味噌を仕上げることではない可能性が、大いにあるわけです。

一人ひとりの人生の成果を他人が規定することなんてできないし、いろんな成果があるからこそ、この美しくて不思議な世界は続いていくのでしょうねー。

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