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第92話 都市伝説『クリスマス』(BJ・お題『12月』)


まずは12月15日のCNNのこんなニュースから。

子どもたちに「サンタはいない」と発言、司教が謝罪 イタリア
(CNN) イタリア・シチリア島のノート教区で先週、カトリック教会の司教が「サンタはいない」と発言して子どもたちを驚がくさせる出来事があった。地元教区はその後、子どもたちをがっかりさせてしまったとして謝罪している。
地元メディアによると、スタリアーノ司教は子どもたちを前に「いや、サンタクロースはいない」と発言。さらに「サンタの赤い衣装は実は、コカ・コーラ社がただ宣伝目的のために選んだものだ」と追い打ちをかけた。
イタリアメディアの報道によると、一連の発言は聖ニコラウスの祝日に開かれた催しで飛び出した。聖ニコラウスはサンタクロースの着想源になった人物で、その寛大さで広く知られていた。
司教の発言が拡散した後、ノート教区は司教の報道官による謝罪文をフェイスブックに投稿。「まず司教に代わって、子どもたちをがっかりさせてしまった今回の発言に遺憾を表明する。これはスタリアーノ氏の意図ではなかったとはっきりさせておきたい」と述べた。
そのうえで、司教の狙いは「クリスマスとその美しい伝統の意味について一層高い意識をもって思いをはせ、ますます『商業化』と『脱キリスト教化』が進むクリスマスの美しさを取り戻す」ことにあったと説明した。
さらに「聖ニコラウスを起源とするサンタクロースから老いも若きも教訓を引き出せるとしたら、それは『つくり出しては消費する』贈り物を減らし、互いに分かち合う『贈り物』を増やそうということだ」とも説いた。
スタリアーノ氏は10日掲載のイタリア紙とのインタビューでも自身の発言に触れ、「子どもたちにサンタは存在しないと言ったわけではなく、本当のことと本当でないことを区別する必要性についての話だった」と語った。
「消費文化」がクリスマスの真の意味を覆い隠してしまったとも指摘し、クリスマスの本質は、「全人類に自分を贈り与えるために生まれた」幼子イエスの誕生に示される「贈与」のメッセージにあるとの見方を示している。

まずコカ・コーラ社のホームページでも、コカ・コーラのCMでサンタクロースを起用する1931年より前は、サンタクロースの姿については必ずしも今のようなものではなかったと言っています。ですが、赤い服についてはカトリックの司祭の服の色を踏まえているということもありますし、コカ・コーラが赤いサンタを発明したかのように言うのは大げさかもしれません。


とはいえ、現代においてもサンタクロースのありようは国によって結構異なっています。たとえばオーストラリアではクリスマスが夏になるため、サンタクロースはトナカイの引くそりではなく、サーフボードに乗ってやってきます。


聖ニコラウスがクランプスという悪魔といっしょにやってくる国もあります。ドイツやオーストリアの伝承にあるクランプスという悪魔は、悪い子にお仕置きをしにやってきます。この悪魔、今ではアメリカでも人気で仮装も流行っていますし、日本でもクランプスを広めようとする団体があります(ま、今更クランプスなんかなくても、日本にはなまはげがいますけれどね)


クリスマスの商業化と脱キリスト教化が嘆かれていますが、これについてはどうでしょうか?

そもそも12月25日はイエス・キリストの誕生日じゃありませんよね?

え?と思いますか?実はクリスマスはイエスの生誕を祝う日ではありますが、誕生日ではありません。聖書にもひとこともそんなことは述べられていません。

12月25日は古代ローマのミトラ教でミトラスという神を祝う冬至の祭りでした。これはローマ神話のソル・インウィクトゥスの祭りでもあります。

また、古代ローマにはサトゥルヌスと呼ばれる農耕神がおり、その祭りが12月17日から24日まででした。この祭りの間、人々は贈り物をしあいました。サンタクロースのルーツはこのサトゥルヌスだとも言えます。

古代スカンジナビアの神オーディンも忘れてはいけないでしょう。北欧では冬至の祭りをユールと呼び、オーディンに捧げ物をします。つばの広い帽子をかぶり、長い髭を生やしたおじいさんとして描かれるオーディンは、サンタクロースの姿の原型のひとつだと言えます。その証拠に、冬になると8本足の空飛ぶ馬に乗ってきます。サンタクロースのトナカイは足の数と同じで8頭です。

キリスト教を国教と定めたローマ帝国は、もともと行われていた祭りを潰さずに、なおかつキリスト教を広めるために、キリストの生誕を祝う日を12月25日としてそれまでの祭りに乗っかってしまったのです。つまりそもそもクリスマスは、キリスト教のものではなかったのです。

冬至の祭りは、年に一回の、酒や博打でどんちゃん騒ぎが許される日でした。現代においても、クリスマスのおかげで景気が良くなりますし、プレゼントを贈り合いますし、カップルはやり放題。そういったありかたこそが、正しい祝い方だと言えるのではないでしょうか?商業化でけっこうなのです。


また、よく指摘されていることに、クリスマスと悪魔崇拝の関連というのがあります。そこでまずサンタクロースの起源であるサトゥルヌスについて考えてみましょう

サトゥルヌスは土星であるサターンの語源で、悪魔のサタンとは一応別ものということになっていますが、同じだと考える人たちもいます。たしかにサトゥルヌスもゼウスに敗れてゼウスに敗れてオリンポスを追放され地に堕ちているので、堕天使サタンとよく似ていると言えます。

また、サンタはサタンのアナグラムであるという人もいます。もっともこれはセント・ニコラウスからシンタクラースという存在が生まれ、そこからサンタクロースに転じただけですので、アナグラムはたまたまだとも思われます。それなら英語で悪魔のことをオールド・ニックと言いますから、聖ニコラウスの愛称であるニックとの関連を指摘する海外のサイトもあります。

また、クリスマスツリーの上にある星は、悪魔崇拝を意味しているとも言われます。


ただ、現代にある悪魔崇拝と、かつてキリスト教が作った悪魔とは分けて考える必要があるでしょう。
そもそも悪魔とは、キリスト教が異教の神様のことをそう呼んで悪者にしたのです。
現代の悪魔崇拝は、それとは別物です。キリスト教が作った悪魔という虚像を踏まえ、逆に本当にそれを崇拝する人たちが現れたのです。

つまり、悪魔崇拝を生み出したのはキリスト教ということになります。

そもそも異教徒を支配し、根絶やしにし、祭りまで乗っ取ってしまったのがキリスト教徒なのです。「悪魔」と呼ぶのにふさわしいのはどちらでしょう?

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