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第60話 都市伝説『姑』(BJ・お題 『人怖』)

嫁姑の争いというのがありますね。私も仲の悪い嫁姑というのを身近に知っています。個人的には姑が悪い、嫁いびりのほうが多いんじゃないかなと思っています。だいたい余計な口を出すんです。あれは、いびっている姑のほうが、弱っている存在だと言えるでしょう。自分の立場やら、威厳といったものが脅かされているから、まず被害的になりますね。弱っている人は攻撃的になることで自分の身を守るんです。交感神経が優位になってアドレナリンが出まくっている戦闘モードに入るというわけです。

結果、今で言えばモラルハラスメントをするのでしょう。そもそもいっしょに住むのがよくないんだと思います。人が仲良くやるためには距離感が大事です。家の中に価値観も風習も違う他人同士がずっと一緒ということになれば、ストレスは溜まらないほうが不思議です。家庭というのは密室ですから、いびりもエスカレートしますしね。ま、そんな状況を作り出した夫が元凶かもしれませんけれど。最近は核家族化が進んで、いっときよりはその手の問題も減ったように思いますが。

こんな嫁姑問題は大昔からあったようです。江戸時代、仲の悪い嫁姑がいて、嫁が医者に行き、姑に盛るための毒をくれと言う、という話があります。嫁は医者に、毒を盛る代わりに徹底的に親切にしないといけないと言われ、嫁は親切にしながらもらった毒を盛るようになりました。するとそのうちに姑も優しくなり、すると嫁もやさしくなる。実は毒というのは毒でもなんでもなかったので、その後二人は仲良く暮らす、というお話です。
形からでも優しく接し、優しい言葉を使うってことが大事なんでしょうね。


さて、今からする嫁姑の話は、似たような話をネットで見たこともあるのですが、こちらはBJがかなり昔に叔母から聞いた話なのでまったく別の人のことだと思われます。ある家に嫁いだよし子さん(仮名)という女性がいました。彼女の場合は、お姑さんには可愛がられました。よし子さんが嫁いでまもないある日、姑が「これ、あなたにあげるわよ」と有名ブランドの鞄をよし子さんに譲ってくれようとします。
「結構ですよ。悪いですから」と最初は遠慮がちです。
でも姑はニコニコとしている。「よし子さん、よし子さん」と言って、今度は有名店に並んでケーキなどを買ってくる。毎日のように嫁になにかをする。することがなければ優しく声をかける。
嫁も嬉しい。いいお姑さんだと喜びます。「悪いですね」と言っていたものが「いやあ、いつも本当にありがとうございますー」と素直に好意を受け入れるようになる。姑はニコニコする。人は何かをされると、お返しをしたくなりますね。今度はよし子さんが
「お義母さん、おかげんはいかがですか」
「お義母さん、なしを買ってきましたよ」
「この服、お義母さんに似合うんじゃないですかね」
 姑はニコニコする。よし子さんも笑顔になる。近所でも評判の、仲睦まじい嫁姑となります。
やがて姑は介護が必要になる。
よし子さんは「お義母さんには本当に感謝していますから」と、献身的に介護をするようになる。姑はニコニコしている。
ついに姑は「よし子さん、ありがとう」と言って死を迎えます。
 葬式が済み、よし子さんが姑の遺品を整理していると、お守りがありました。よし子さんがそれを何気なく開けてみると

 『よし子死ね』

 と書いてありました。
 よし子さん、それから数日、ショックで寝込んでしまったということです。

 
 優しいふりをしつづけても、だめなときはだめなんですねえ。

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