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第19話 怪談『シアター』(バス・お題「幽霊」)

かつて、映画館が入れ替え制でなかった時があります。

今はシネコンで席も指定で入れ替え制ですが、当時は一回千円前後で映画館に入ると二本立てで、朝入って夜出ることもできました。 
私が子供の時もゴジラとドラえもんが同時上映で両方楽しめ、見逃しても何回もみれたというとても嬉しい時代でしたね。

一度小さな映画館に父と入りましたら、なんと3本立てで、アニメ二本の後に大人の向けのHな作品が流れた時はびっくりしました。
アニメ二本しかピックアップされてなく、まさかそんな作品が流れるとは父も思ってなかったらしく、罰の悪そうな父の顔が忘れられません(笑) 

伯父が隣の県に出張で行った時の話をしてくれました。
4日の予定で出張に行ったそうですが、1日予定が空いていた為、その街を歩いていると小さな映画館が出てきたそうです。

やる事もない為、映画をみようかなとその映画館に入ったそうです。
玄関を入ると小さなカウンター、スクリーンに向かう途中にはソファー、カウンターには枯れかけの花瓶に入った花が添えてあり、壁には色々な映画のポスターが貼ってあったそうです。 
 
チーンとベルを鳴らすと奥から年配の女性が出てきて、お金を渡すとまた何も言わずに奥に行ったそうです。

重い扉を開けて館内に入ると、シーンと誰もいなかったそうです。 
これはゆっくりできるなと伯父は思ったそうです。
 
上映が始まったそうです。
1本目は普通の男女のドラマ映画。
2本目それは四谷怪談でした、 

忠臣蔵に出てくる、浅野内匠頭の家臣、伊右衛門はお岩と結婚しますが、子供を持った際の産後のひだちが悪く、それを疎ましく思っていた時に良縁の話がでたそうです。
その相手方がお岩を亡きものにしようと、嘘の薬を飲ませると髪は抜け、顔が崩れていく、そして、一緒にいた男ともみ合ったさいに殺されてしまい、その後、怨みの念で伊右衛門の元に幽霊で現れるという話です。

叔父は四谷怪談が好きで、その時に出ていた役者の伊右衛門、お岩、が生き生きとまるで本当に自分の目にいるようで、その四谷怪談に魅力されて何回もみたそうです。
時間がすぎるのも忘れてすっかり夜になっていたそうです。

そろそろ出るか、そう思い叔父が席を立ちカウンターの前を通ると年配の女性がいたそうで、
叔父が
「この四谷怪談は見た事ない映画でした非常に役者が生き生きとしていていいですね」

と話すと

「おかしいですねー、うちには怪談映画はおいてないはずなんですが、いえね、以前は上映していたんですが、余りにも上映してると変な女性を見ただの床が水浸しになってるだのあるもんでね、やめているんですよ」
と言いニヤーと笑い

「何も無いといいですねー」

そう言ってまた奥に入っていったそうです。
叔父はビックリさせようと思ってるのかな、しかし気持ち悪いこというなと思い、その映画館を後にしたそうです。

次の日仕事の合間にあの映画館が気になりその映画があった場所を通ることにしましたが、その場所の付近には映画館はなく、見つけることができなかったそうです。
ただ映画館があったであろう、場所の奥に脇道がありそこを抜けると古びた家がありその家が映画に出ていたお岩と伊右衛門の家にそっくりだったそうです。

怖くなり叔父はもうその街には2度と行かないことにしたそうです。

動画はこちら。


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