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第14話 都市伝説『心の友』(BJ・お題「夏」)

https://youtu.be/KXkQapmwn98


ある中学生のブログの内容です。

「信じられない。シグナスはバツイチだった。あいつとつきあったやつがいた」

こんなのはただの嫉妬かな、と思いますが、別の日のブログは

「シグナスが暴走してきた。『ともに心の中の存在に』とか言って、強い力であたしの手を引く。あたし、あしたはこの世にいないかもしれない」

それが最後でした。彼女は本当に死んでしまったそうです。夏の夜に、窓から落ちて。


彼女のブログを見ていた人は、みんな後味が悪く思ったそうです。デートDVってやつじゃないかな、って。


彼女のブログをさかのぼると、あたしには「シグナス」がいる、っていう話題がされるようになってしばらくしてから、こんな詩をあげていました。


『シグナスの詩』
ノックが3回聞こえる
あたしの一念は 実在化した
色白で、黒い服、胸には黒い蝶の刺青をして
楽しそうに言ってくれる
「はるか西は、イギリスからお迎えに参上しました」
遅いよ
だれのところにいたの と責める
あなたはすかさず しらをきる
「君の幻影と いただけさ」と
別れの朝が来るくらいなら、と
あたしの時計を柱に隠し
覚醒された力で ついには太陽さえ隠す ただあたしのために
闇と化した空を
銀河鉄道で
天地が返るほどに ゆく、ゆく、ゆく
この河のなまえはなあにと尋ねても
「星が作った三角形
底辺1 斜辺2 高さはなあんだ」と尋ね返される
あどけなく北十字を見つめ
ハレーの彗星のしっぽをつかむころ
「枕の下を見てごらん」
羽の王冠が並び
オパールの指輪をはめてくれた
朝四時は永遠になる



意味はよくわかりませんが、なんだか官能的です。


ところで、イマジナリーフレンドという言葉があります。

頭の中で想像し、あたかも実際にいるかのように話をしたり、一緒のひと時を過ごしたりする人物のことです。別の人格がいるという点では多重人格にも似ていますが、あくまでイマジナリーフレンドは、自分そのものではなく、作り上げるものです。

小さい頃はよくあるんですが、大きくなってもやっている人もいますね。

あとでこんなことに気づいた人がいました。ブログの内容を思い出しましょう。


「信じられない。シグナスはバツイチだった。あいつとつきあったやつがいた・・」


最初は、元カノがいるっていうだけで今ではバツイチとかいうのかな、「だれともつきあったことがないよ」とか言われたのに、つきあっていた人がいたことが分かって「信じられない」って言っているんだろうな、って思ったかもしれません。でもこれは

「自分が作り上げたはずのイマジナリーフレンドなのに、その前にもシグナスをイマジナリーフレンドにしていたやつがいた。そんなことって信じられない」っていう意味じゃないかと。

それに気づいた人は、シグナスの元カノを探したそうです。

するとその前の年の夏に、「シグナスがヤバイ。暴れる」というツイートを残し、例の中学生と同じ日に、スクーターの事故で亡くなった女性がいるということを知り、恐怖を覚えたと、私に教えてくれました。


「心の中」と書いて心中。イマジナリーフレンドに心中を強いられたんじゃないかとも読めますよねえ。


そのかたはこの件をこれ以上探るのはやめたらしく、この話はこれで終わりだろうと思ったそうです。
でも次の年の夏、ふたりがなくなった日が近づき、ふと「シグナス」で検索したそうです。

そのかたは笑って言ってました。「もしかしたら、またシグナスとつきあっている娘がいるんじゃないか。だったら止めなくちゃいけないんじゃないか、って思ってね。でもぜんぜん違ったわ」

ぜひ「シグナス」で検索してみてください。スクーターの名前が出てきます。最初に亡くなった女性は単なる交通事故であったということです。彼はさらに亡くなったふたりの女性のつながりも調べたそうです。

実はふたりとも腐女子を自称していたそうで、コミケで知り合った仲間であったそうです。シグナスの詩にも注目しましょう。「三回のノック」「黒い蝶」は死を知らせる縁起の悪いものです。銀河鉄道は死の国に行く列車ですし、他にも「ドッペルゲンガー」や「西方浄土」、「数字の4」など、ありとあらゆる死に関連した言葉が散りばめられています。

腐女子仲間を失った彼女は、後を追ったのだ。自分の死を演出で飾った上で、仲間の命日に自殺したのだろう、と彼は結論づけています。

皆さんはどう思いますか?


美しい夜空ですね。

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