漫画で生きていくハードルを下げるために、コンテンツと作家を結びつけようという話
漫画を描いて生きていくのは難しい。
商業誌で連載を取るまでには、相当の努力が必要だ。
ネーム(ラフ画)を何度も何度も描き直し、内容を洗練させて初めて、他の作家の作品と勝負できる機会を得る。
連載会議で負ければまた最初から。
ネームを何度も描き直す。
連載を勝ち取れたとしても、いつ打ち切りになるかわからない。
打ち切りになればまた最初から。
漫画で食っていくのは難しい。
なぜ漫画で食うのはこんなにも難しいのか。
この記事では、漫画で食うのが難しい理由を、
〝コンテンツと作家が繋がっていないから〟
という観点から、見ていく。
コンテンツと作家をうまく繋げることができれば、
漫画で食っていくのはもっとカンタンになる。
という記事である。
この記事は弱者へ向けた記事。
弱者のための弱者戦略。
連載を取るために何年もネームを描いて、
やっと連載を取ったと思ったら打ち切りで、
また一から何年もネームを描いて
そんな生活を抜け出したい人は、ぜひ目を通してほしい。
✳︎
「漫画家」と、漫画家が生み出した「漫画」。
このふたつは、実は繋がってるようで繋がっていない。
読者が待ち望んでいるのは基本的に「漫画家」ではなく、「漫画」だ。
どういうことか、
ミュージシャンと漫画家を比較して説明しよう。
音楽は、コンテンツ(楽曲)と作家(ミュージシャン)が結びつきやすいジャンルだ。
ミュージシャンが曲を出すと、ファンは曲ではなくミュージシャン自身につく。
例えばの話だが、米津玄師が「Lemon」という楽曲を出したとしよう。
そしてその曲でオリコン2年連続1位を取ったとしよう。
「Lemon」という楽曲を好きになった大半の人は、米津玄師を好きになる。
もちろん、「Lemonは聴くけど米津は別に…。」という人もいるだろう。
しかし、ファンになるくらい好きになった人は米津玄師まで目がいく。
「この人他にどんな曲を出してるんだろう。」
と、米津玄師の他の楽曲まで聴き漁る。
漫画の場合を考えてみよう。
漫画はコンテンツと作家が結びつきにくいジャンルだ。
「ONE PIECE」が大好きな人は非常に多いと思う。
しかし、尾田栄一郎が大好きという人は、その中でどれくらいいるだろう。
尾田先生の連載作品は「ONE PIECE」だけだが、ONE PIECEのほかに、「WANTED」という短編集を出している。
ONE PIECEが好きな人の中で、尾田栄一郎の他の作品「WANTED」まで読んだ人はどれくらいいるだろうか。
音楽のソレには遥かに劣る割合だろう。
「ONE PIECEは好きだけど、他の作品には興味ない。」
漫画ではこんなことがよく起こる。
〝漫画は、コンテンツと作家が繋がりにくい〟
という意味がわかっていただけただろうか。
✳︎
ぶっちゃけ、ONE PIECEくらい売れていればなんの問題もない。
そんなこと考える必要もない。
しかし、誰もが大ヒットを飛ばせるわけじゃない。
弱者には弱者の戦い方が必要だ。
もしあなたが漫画家で、週刊少年ジャンプで連載したとしよう。
例えばそうだな、
「となりのデブは踊りたい」
という作品を連載したことにしようか。
で、
やっとの思いで連載を勝ち取ったあなた先生
「となりのデブは踊りたい」は、
そこそこ読まれたが、3巻で打ち切りになったとする。
打ち切りを食らったあなた先生は
また連載を取るために出版社と打ち合わせ。
2年くらい準備期間を経て、「新連載を始める」となったとしよう。
「となりのデブは踊りたい」のあなた先生が新連載を開始!!!
となったとき、期待する人はどれくらいいるだろうか。
「となりのデブは踊りたい」は好きだったけど、あなた先生には興味ない。
という人が大半だとすると、
あなた先生は2度目の連載をほとんど0の状態からスタートしなければならない。
あなた先生の名前すら、世間には浸透していない状態だ。
「となりのデブはおどりたい」の先生
と言われて、ようやく「あー、あの作品の人か」という程度だろう。
これって、ものすごく不利だと思わないだろうか。
仮にも、一度実力で週刊少年ジャンプの連載を勝ち取っているにもかかわらず、
「あなた先生の作品だから読む・買う」
といったアドバンテージが、ほとんどないのだ。
音楽ならばまずこうはならないだろう。
楽曲が1度人気になれば、ミュージシャンの名前は浸透する。
漫画で食っていけない漫画家に対しては、
もちろん「面白い作品を描けないのが悪い」という意見もあるかもしれないが、
例えば、あなたが好きなミュージシャンの楽曲は、全て名曲と呼べるような曲だろうか。
むしろ名曲は聴き飽きて、クセのある曲の方が好きだったりしないだろうか。
万人にとっての面白いを描き続けなければ、連載作家を続けられないのが今の漫画家だ。
なぜならファンは、作家ではなく面白い漫画につくから。
漫画を描き終われば、またゼロからのスタート。
ちょっとしんどいと思わないだろうか。
せっかくなら、
描いた漫画を読んでくれた人が、自分自身にも興味を持ってくれて、
「次回作も応援してます!」
って、なった方がよくないだろうか。
たくさんの人に応援されながら、2作目、3作目と、漫画を配信できた方がよくないだろうか。
万人受けするような面白い作品は描き続けられないけど、一部の読者が作品を好きでいてくれるから、ずっと漫画家でいられてます。
そんな漫画家人生の方がよくないだろうか。
ボクはいま、そっち側に行こうとしている。
✳︎
ボクのことを少し話そう。
ボクは全くの無名漫画家だが、
現在、ボクに興味を持ち、毎月支援してくださっているファンが8人いる。
その方々はボクが配信した作品も買ってくれる。
ボクは今、商業誌で連載を勝ち取るのではなく、
ファンを増やして漫画活動を継続させようとしている。
その方が幸せだからだ。
元々は商業誌連載を目指して、6年間出版社に通っていた。
しかし、6年で残せた実績はゼロ。
単純に、商業誌でやっていく実力がなかったのだ。
しかし、それでも漫画家にはなりたい。
わがままな男である。
ともかく、
ボクは夢を諦めないことを選択したわけだ。
しかし、このまま出版社に通ってもおそらく見込みはない。
どうするか。
と、なったとき、
目をつけたのがインターネット。
ボクはブログとTwitterに漫画を投稿し続けた。
すると、まったくの無名で実力皆無だったボクでも
Twitterのフォロワーさんはどんどん増えていった。
今では4800人ほどいる。
ボクの漫画活動を応援してくださる方はたくさんいるし、作品を買ってくださる方も、毎月支援してくださる方もいる。
活動を続けて1年半ほどでここまできた。
このまま活動を続けていけば、出版社から本を出さなくても漫画家を継続できる見込みだ。
✳︎
ファンが直接応援してくれれば、作家として生きられる。
大手から売れる、売れないに関わらず、個人の活動で生きられる。
しかし、漫画という媒体でそれは至極難しい。
なぜなら、コンテンツと作家が繋がりにくく、作家が認知されにくいから。
漫画家自身がしっかり認知され、
ファンからの直接応援を受けるには、ミュージシャンのようにコンテンツと作家をうまく繋げる必要があるのだ。
✳︎
そもそも〝コンテンツと作家を繋げる〟とは、どいうことなのか。
その説明の前に、〝なぜ漫画家自身にはファンがつきにくいのか〟を解説しよう。
人は人に感情移入するものだ。
人に笑い、人に泣き、人に怒り、人に惚れる
また音楽を例に出そう。
ミュージシャンの場合は、楽曲の中にミュージシャンの感情が込められている。
ミュージシャンが歌うことで、曲に感情が込められる。
人はミュージシャンに感情を動かされ、好きになる。
楽曲が素晴らしい=ミュージシャンが素晴らしい
と、コンテンツと演者(作家)が直結する。
では漫画の場合はどうだろうか。
人が漫画に感情移入するときは、漫画家に感情移入するのではない。
漫画の中のキャラクターに感情移入する。
読者は漫画家ではなく、漫画の中のキャラクターを好きになるのだ。
だから、感情移入が作家まで降りてこない。
結果的に、〝漫画は面白いけど作家には興味がない〟という事態が発生してしまうのだ。
〝コンテンツと作家を繋げる〟とは、
「コンテンツの感情移入の対象を作家に向ける」
ということ。
漫画家とファンを結びつけるためには、
漫画家自身に感情移入させることが必要なのだ。
✳︎
漫画家とファンを繋ぐために、
漫画家自身に感情移入させる。、
そのためにはどうすればいいのか。
答えは至極簡単だ。
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