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食べれない 食べてもらえない/2024.02.10


2月のあたま。

近所の公園のベンチで、ボーッとしていると、真後ろから男の子の泣き声が聞こえた。
振り返ると、立ったまま泣いている男の子と、そばにはお父さんらしき男性がいた。
そして、男の子の足元には食べかけのドーナツが落ちていた。
男の子が食べていたドーナツをうっかり地面に落としちゃったのだろう。

男の子は、
「新しいドーナツ買って」
と泣きながらお父さんにいった。

しかし、お父さんは、
「ダメ。このドーナツ食べる前に1個大きいの食べたじゃん」
と落ちたドーナツを拾いながらいった。

男の子は、
「ヤダ。ドーナツ食べたい。買って」
ともう一度お願いする。

「じゃあ、食べれないところは取り除いて、残ったところ食べよう」
そのドーナツは紙ナプキンに包まれていて、紙ナプキンに包まれていないところだけが地面の土についちゃったみたいだ。
それを取り除けば、食べれそうだった。

でも男の子は、
「イヤだ」
と拒否した。

「じゃあ、このまま食べる?」
「イヤだ! 新しいドーナツ買って!」
このやり取りを5回くらい続いた。

「このドーナツはもともとパパが食べていたドーナツだよ。〇〇くんが欲しいっていうからあげたから、もうドーナツないよ」
「じゃあ、ドーナツ買ってよ」
「買いません。〇〇くんがドーナツを落とすのが悪いでしょ」
男の子の泣き声の大きさがさらに増した。

確かにお父さんのいうとおりだ。
さあ、どう納得させるのだろう。
お父さんの説得がすごく気になる。

お父さんの手には、男の子が落としたドーナツがあった。
そのドーナツも、きっと泣いていると思う。

食べる人を幸せにするために作られたドーナツ。

しかし食べられている途中で地面に落ちてしまい、まだ食べれる部分があるかもしれないのに、いらないから新しいドーナツを買って欲しいなんて聞いたら、落とされたドーナツはショックを受けているに違いない。

なんで落としちゃうの? 
最後まで食べて欲しかった……。

そんな悲しい声がなんとなく聞こえてきた気がした。

それから、同じ会話を何度も繰り返して、男の子は泣き止まなかった。
そしてお父さんと一緒にどこかに行ってしまった。

落ちたドーナツはどうなったんだろう。
そのまま捨てられたのかな。

男の子がドーナツの悲しみに気づくのは、もう少し大きくなってから。

最後まで読んでくださりありがとうございます。これからもワクワクドキドキウルウルする作品を作っていきます。作品が良かったら「スキ」を押していただけると、とても嬉しいです。次の更新もお楽しみに^^