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じいちゃん。 ところで神様は僕のこと褒めてた?


僕はじいちゃん子だった。早くにばあちゃん(僕にとってのばあちゃんだから、じいちゃんの奥さん)を亡くし、以来、ひとり暮らしをしていたじいちゃんの家へ、子供の頃はよく遊びに行っていた。じいちゃんとはよく近くの田んぼを散歩した。田んぼを抜けると小さなデパートがあって、行くと必ずそのデパートの本屋さんで「ドラえもん」の漫画を買ってくれた。じいちゃんの家に行く度に「ドラえもん」が一冊ずつ増えていくのが楽しみだった。散歩して、買ってもらった「ドラえもん」を読んで、あとは他に何をするでもなかったけど、じいちゃんといるのが好きだった。煙草が好きだったじいちゃんは、僕が中学生の頃、肺癌で亡くなった。

大人になって、僕はある日突然「見えないもの」が見えるようになった。本当に、ある日突然。何の前触れもなく(後から考えると「あれが予兆だったのかなぁ」ということはあったが)。それはそれは怖くて恐ろしくて、「世界」というものは果たしてこんなに恐ろしいものか、と、数ヶ月間、家を出られなくなってしまった。この恐ろしさやこの状況を誰にも相談できなくて、僕は心の中で何度もじいちゃんに助けを求めた。

じいちゃん助けて
じいちゃんどうしたらええの?
怖いよじいちゃん

でも、じいちゃんの声がするなんてことは一度もなかったし、夢にさえ出てきてくれなかった。「じいちゃん、なんで答えてくれへんの? こんなにつらいのに、なんで何も言ってくれへんの!?」と、泣き叫んでも無理だった。観念した僕は、勇気を振りしぼって少しずつ外へ出られるようになり、いろんな人の励ましのお陰であの時期を乗り越えることができた。お陰様で今ではこの通り心も安定して、幸せに満たされた生活を送っている。


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ある夜、ふと夜中に目が覚めた。
体を横に向けて寝ていたら、真後ろに人の気配がしたのだ。太ももに手の温もりを感じる。はっきりと。その手は、僕の太ももを優しく撫でた。不思議と怖くはなかった。
「じいちゃん?」
僕はその「気配」に向かって聞いた。何も答えなかったけど、じいちゃんだとわかった。
僕は子供のように大泣きした。
じいちゃん、じいちゃん、何で今まで出てきてくれへんかったん? あのとき、あんなに呼んだのに、めっちゃつらかったんやで、めっちゃ怖かったんやで、なんであのとき僕を1人にしたん?
ワーワー泣きながら叫んだ。すると、声がした。じいちゃんの、声。ずっと聞きたかった、じいちゃんのあのしゃがれ声。


ワシが死んだあとな、お前の抱えている運命があまりにも大きいのがわかってしまってな、心配で神様の元へ行ったんや。あの子はどうなるんでしょうか?って。そしたら
『ある時期まで、あの子に手を貸してはいけない、一切の情報も与えてはいけない』
って言われたんや。お前が自力で自分の道を見つけるまで手を貸してはいけない、これは契約だ、って、神様に言われてな
でもな、今日でその契約が終わっていろんな事が解禁になったんや。つらかったやろう、苦しかったやろう、ようここまで踏ん張ってきたな、えらかったな
お前はな、たくさんの人に助けられてここまで来たんやぞ。それを忘れたらあかんぞ
人に感謝だけは忘れたらあかんぞ、お前は1人じゃないんやぞ、お前はたくさんの人に守られて、愛されてここまできたんやぞ。感謝だけは忘れたらあかんぞ
これからお前の道は大変なことが待ってる。でもな、お前は1人じゃないんやからな
お前やったらできるから。じいちゃんも、お前の中におるから。お前は1人じゃないんやぞ


じいちゃん、じいちゃん、
うんわかった、わかったよ。

子供みたいにワンワン泣きながら、「じいちゃんの話し」を聞いた。あったかい手の感触が心地よかったのか、僕は泣き疲れてそのままいつの間にか寝てしまい、気付いたら朝になっていた。もちろん、じいちゃんの気配はもうなかった。
初めてアメリカを訪れる二日前の夜の出来事だった。


2015. Jan
Photo & Writing by kai


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