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かわいそ笑を読んだら寝れなくなりました※ネタバレほぼ無し


この記事は梨さんの本めっちゃ気になるけどめっちゃ怖そうで買うのすごい迷う~~~~~~!!といった思考に陥り書店をウロウロしている人に向けた記事になります。まさに筆者がその思考に陥ってTSUTAYAでウロウロしていました。そういう人には参考になると思います。


読書感想文というより日記に近いです。





読みました。読みましたよそりゃ。あの梨さんの本だから!!

当方ホラー映画やほん怖などの映像系ホラーがとにかく地雷でNGで超苦手で何なら憎しみすら抱いているホラー耐性皆無の貧弱野郎ですが、洒落怖やネット怪談、禍話やSCPなどの文章によるホラーはめちゃくちゃ震え上がるけど大好きという特異体質の持ち主でございます。

有名な洒落怖はだいたい読んだ。スレ民が実際に凸ったりする話や書き込み主が途中から変貌してしまう系が好き。

そんな訳なので、当然梨さんは存じ上げている。

SCP界隈で既に良質な文字ホラーをぶち込んできた梨さんが送る珠玉のモキュメンタリ―ホラー。いや、ドキュメンタリーかもしれない。こんなにも読み手に近づいて、耳元で囁くかのような怪談書けるの本当にすごい。

しかもこの文章オモコロ杯に出してるのも本当にすごい。当然こんなクオリティの文章出されたらオモコロ側も賞を贈らざるを得ない。ホラーとギャグは紙一重というが、この人のはホラーの深淵にいるから審査側は完全に畑違いの心境だっただろう。雨穴さんがホラーの土壌を築いてた結果か。

オモコロに行ってからも良質な文章ホラーを量産する梨さん。元々オモコロ読者なため、心惹かれるのに時間はかからなかった。


そして本が出た。


買うのには時間がかかった。



まずすぐ売り切れるから買えない。あまりにも怖すぎた場合即ブックオフに投げ込みたいというリスクヘッジのため電子では買いたくないという思いから再入荷を待っていた。

気が付いたら重版されてた。


書店で一応中見を軽く確認し、急に怖い絵とか出てこないことを確認し、何度もウロウロして購入。


その日は夜遅く、読むなら一気に全部読みたかったのでいったん本棚(というか積み本置き場)に置き就寝。……


…寝れない


まだ内容が分からない怪談本なんてもう呪物みたいなもので、本を置いている場所に悪いものが集まってるんじゃないか的な思考に陥る。

また、買う前にAmazonレビューを眺めていた際、「自己責任系」「読む呪い」「取返しのつかないことになりました」などの大絶賛の恐怖のレビューが並んでいた。通常書籍のAmazonレビューはどんなに面白い本でも自称読書通が猛烈に変な角度で批判して「人気作批判できる俺カッケーw」みたいな思考のおじさんが一定数いるため往年の名作でも☆3とかになるのだが、かわいそ笑に関しては恐怖というベクトルで圧倒的な好評データを叩きだしており、レビュー☆4.5とかいう異次元の数字を出していた。

万人が怖いと感じる本書、置いてあるだけでなんか怖いという特級呪物。おそらく宿儺の股間部をこの本で隠してたとかだろう。宿儺の指と宿儺の葉っぱ隊。


同じく特級呪物のワタサバを重ねて封印


なんとか睡眠導入ASMRで意識を落とし、来る休日。実家に帰りました。この特級呪物を読破するために。一人暮らしのワンルームではあまりにも心細かったので。


実家には猫が2匹住んでいるので怖くなったら猫を撫で心を落ち着かせるという作戦である。

完璧だ… 

両親のどちらかは家にいるだろうと踏んでおり他に人がいれば更に怖さも軽減されると思っていたらたまたま両親仕事の日だったけど完璧な作戦である。良質な恐怖を感じるために2000円払ってんのにめちゃくちゃ対策して読むのよくわからないけど。


頼んだぞ


ここから先は若干の匂わせ程度のネタバレがあります。一応ネタバレ無しレビューや本書の帯などからしか分からない情報程度のものです。



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3時間かけて読みました。


怖すぎ。ナニコレ。怖すぎるだろ。


梨さんと言えば体験記やインタビューを文章化ではなく生きた声のような表現で綴られることが特徴だけれども、遺憾なく発揮されている。

メールやテキストサイトの抜粋、中には掲示板のやり取りまで細かく掲載されている。本を読んでいるはずなのに、洒落怖まとめからドンドンリンクを踏んでいっている感覚。

そして、それらの文章を梨さんの地の文でつなぐ、と言ったことはなく、読み手が一個一個の章を読み解いていく。

それぞれの抜粋された文章は、中にはシンプルに怪談なものもあれば、一見よくわからないけど何か不気味~といったものまでさまざまである。一貫して言えるのは、常に背中にうすら寒い恐怖がべったりついていること。ほの暗い恐怖である。

そして、後半に、クライマックスに近づくにつれ点と点でしかなかった恐怖が一気に線に…!なることはない。ただし、限りなく線には近づく。完全に線にならないところが、本書の一番怖いところかと個人的に思う。

しかも、この本が「自己責任系」の「呪物」であることはその点が線になりかけるところで理解する。最悪だ。なんつー作りしてやがるんだ。一番怖い形で、一番嫌な感情を槍でめった刺しにされる感覚。

全編一気読みはしたが、随所で休憩を入れないととても読めない。そのくらい怖い。特にラストは本当に身構えた。そのために猫を何度も撫でた。撫でてる時猫は虚空をじっと見てた。ねえやめて?猫に裏切られるとは思ってなかったじゃん。



この本が与える恐怖とは人間の根源的な恐怖。


子どもの頃、寝室のタンスを怖いと思ったことは無いだろうか。夜中にトイレで起きた際の廊下や誰もいないリビング。背が届かなくて、開けたことのない引き出しの中。夜遅くのドライブでの帰り道、脇道に見える小さな森。祖母の家の日本人形なんかも近い系列かもしれない。


こういった日常に潜む恐怖を感じたことは無いだろうか。そして、この恐怖とは正体不明の何かに怯えていることだ。

あのタンスの中には何かいけないものが入っているかもしれない。夜中の廊下やリビングには幽霊がいるかもしれない。とかく子どもというものは暗闇に霊的なものを見出し、その豊富な想像力を働かせ恐怖している。

得体が知れない恐怖。「何かがあるかもしれない」という恐怖。これはほとんどの人が経験してきた道であり、いつの間にか克服していたものだと思う。だが実際は克服した訳ではない。得体のしれない、何かがあるかもしれないものに怯えている暇が無くなっただけだ。そして、霊的なものに対する思考に蓋をして、引き出しには何も無い、廊下やリビングに何もいないと思い込んでるだけ。日々に潜む恐怖に疑問を抱かなくなっただけ。つまりは根源的な恐怖を麻痺させているだけ。


この本が与える恐怖とは、まさに根源的な恐怖の奥底。いつしか忘れていた感覚を鋭利な槍でかき混ぜる所業。

この本を読んでいる時、よくわからないけど背筋がうすら寒く、得体がしれないものがどんどん進行していく感がある。この本は霊的な恐怖や怪異譚ではない、と個人的には思っている。




さて、読破した結果どうなるかというと眠れなくなります。

先ほどつらつらと述べた通り根源的な恐怖を突かれるので、暗闇が怖くて怖くて仕方ない。あのタンスには、あの引き出しには、トイレまでの廊下には、何かがいて俺に悪意を向けているのかもしれない。一人暮らし怖すぎる。作中で一人暮らしの人が怖い目にあうシーンもあったから尚更。

そもそもこの本は自己責任系である。ああ、責任を払う必要があるのかもしれない。どうしよう。どうしよう…


これぞ梨ホラー。文学でのホラーの新境地だと思う。恐れ入りました。だからもう許してください。巻き込まないで…


寝るためには新しい活字の情報で上書きすれば大丈夫!と思い米澤穂信著のいまさら翼といわれてもの1章を読みました。やっぱ氷菓ワールドすこ。学園物の作品は数多くあるけど一番空気感が現実に近くて美しいと思う。






それでは、そろそろ眠れそうなので失礼します。













追記)寝れませんでした









追記の追記)もう大丈夫です笑









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