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anegoという呪い

「黒沢くんとナオコさんってセフ〇レなの~~~!??!キャー---!!ところで入学式って体育館履き持ってくの?」

というのが、中学校の入学式の朝、友達からかかってきた電話である。
2005年の4月、まだ12歳だったわたしはノリでパリパリの制服を身に着けて中学校の入学式へ向かった。制服のスカートの丈はヒザより長く、今でこそ長めのスカートが流行っているが、ハイソックスとスカートの裾で、地平線が交わっているのがとてつもなくダサいと思っていた。

家を出ると小学校が一緒だった男の子の友達4人組が歩いていた。「きっと背が伸びるだろうから」という理由で購入したであろう少し大きめの制服を身に着けている。背が伸びずに3年間ブカブカの制服を着ることにならないよう心の中で祈った。
昨日まで、男女関係なくやんちゃ坊主みたいな格好をしていたのに、急に制服を着た姿で対面するとなぜわからないけど少し恥ずかしかったのを覚えている。

そして冒頭に戻るが、この頃私と友人はanegoというドラマの放送に心躍らされていた。
当時女子の間で「仁亀どっち派!?」で派閥が起きていたジンの方が、ちょっと大人でエッチなドラマに出るというのだ。
性の全てをStand upというドラマで覚え、まだセ〇フレという言葉を口に出して言うのも恥ずかしい12歳だったのに、朝から耳の鼓膜ががつんざけるボリュームで叫ばれた。
まだ照れ屋だったわたしは、「そ、そうなんだ…タノシミダネ…」と、寝ぼけたふりをして返した。

そしてanegoの放送が始まったわけだが、このドラマは私に呪いを植え付けた。
それは「黒沢くんを一生探してしまう呪い」である。
このドラマを見てから、わたしはOLというものに激しく憧れるようになった。そしてバリキャリになって、年下男子に遊ばれて…まあとりあえずオフィスでは黒沢くんみたいな人が働いてているに違いないと思い続けてきた。
OLになったらこんなにかっこいい人がいて、時には仕事で困難に立ち向かいながらこんなにかっこいい人とイチャコラしたり、時には「私の人生これでいいのか?」と悩みながらこんなにかっこいい人と一夜を共にしたりするものなのだと教え込まれたのだ。(多分制作者の意図とは違う)
だがわたしの人生的にオフィスで働くということがなく、黒沢くんに夢を抱き続ける痛い29歳になった。

そんな29歳のわたしが、なんとご縁あってついにOLとして働くことになった。


結論。黒沢くんはいなかった。
しかも1年でやめた。(黒沢くんがいなかったからじゃないよ)

黒沢くんってテレビの中の人なんだ…と、サンタの正体は本当はお父さんとお母さんだったという事を知った時くらい衝撃を受けた。29歳だったけど。


こういう呪いって他にもある。

中学校の時に、りぼんで愛してるぜベイベ☆☆☆という漫画を読んでいた時は、高校生になったらきっぺーみたいな人がいて(いなかった)恋をして(できなかった)授業をサボって(サボらなかった)屋上でチューとかして(屋上空いてさえいなかった)…。という何ひとつ叶わなかった青春コンプレックスみたいなのも抱かされまくった。
わたしにとって、愛してるぜベイベが高校生活の理想図であり、今でもきっぺーみたいな人と二度と戻れない高校生活を送りたいなと思ってしまう。

けど、高校生に戻るのは無理だ(冒頭から全部無理だよ)。

だけど、OLならいつでもなれる。
当時anegoは32歳で、「32歳ってこんな感じかあ」と思っていたけど、わたしはあと2年でanegoになんてなれやしそうにもない。


もしかしたら、精神的anegoになったら、どこかで黒沢くんに会えるのかもしれない。
なんて思いながら、多分わたしは一生黒沢くんを探すのだ。

おしまい



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