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はらぺこ少年とちっちゃいこうもり

へとへとに つかれて、もういっぽも あるけない。
ひとやすみ しよう。
せなかから リュックを おろして、 がさごそと あさる。
「たしか、 まだクッキーが3まい のこっていたはず なんだけど…」
しかし、 どんなに すみずみまで てを うごかしても、 クッキーの はいったふくろに たどりつかない。
「あれー---? どこだろう? あ!」
おどろいたことに、 リュックのなかで クッキーを さがしていたはずのてに あたったのは、 ちいさな ちいさな こうもりだった。くちのまわりに クッキーのくずが たくさんついている。
「ぼくのクッキー たべた! こうもりが たべちゃった!」
おなかが ぺこぺこの しょうねん、 さあどうする?

「うーん、 ほかに たべられるもの、 はいってないかな?」
また リュックのなかを がさごそ。
でてきたのは…
かさ、 ほそながいチョコレートの おかしみたいな えんぴつと ドーナツもようの ノート、 ケーキのかたちの けしごむ、 たいせつにしている ほんものの おにぎりのような えがついた メモちょう、 オレンジのみの もようのタオル。
…どれも おいしそうに みえるのに たべられない。

「うー--、 ますます おなかが へってきちゃったよ」

はらぺこしょうねん、 こんどは あたりを みまわしはじめた。 いま、イスのかわりに すわっている おおきないわ、 ひょろっと ほそながいくさ、 きいろのたんぽぽ、 ふわふわのわたげ。 わたげは ぺろぺろキャンディーサイズの わたあめみたい だけど、 たべられないかな?  ちょっと なめてみよう。 うわっ! べろに ぺたぺた くっついた。 あじは ぜんぜん おいしくない。 だめだだめだ。
あ、 ありが きれいに ならんで あるいてる。 おっていったら おいしいおかしが あるかもしれない! じーっとじめんを みおろしながら、あるく はらぺこしょうねん。 
あるかなあるかな、 あまくておいしいもの、 あるかなあるかな? せっせと はやあるきする ありを おっていったしょうねん、 しゅうてんはちっちゃな あなぼこ。 ありのす だった。 もしかしたら、 すのなかに あまいものが あるかもしれないけれど、 しょうねんには とてもとても、 ありのおうちを こわすなんて できなかった。

「うー-------。 おなかすいた。 おなかすいた、 ぺこぺこだ」

はらぺこしょうねん、 きょろきょろきょろきょろ。
なにか、 なにか、 たべもの、 あるかなあるかな?
あ、 あれは どうかな? あのきに なってるみ、 おいしいかな?

てくてくあるいて きのしたへいった はらぺこしょうねん。 きのみが ついたえだを みあげて、 かんがえる。 てを うーーーーんとのばしても、 ちからのかぎり ジャンプしても、 ちっともとどかない。 さてさて、 どうする?

そんなとき、 リュックのなかで かってに しょうねんのクッキーを たべて、 ぐーぐーおひるねしていた ちっちゃいこうもりが めをさました。 まだひるま、 たいようが まぶしい。 
ちっちゃいこうもり、 ぴゅんととびあがって、 ちっちゃなめを きょろきょろきょろ。 そして、 はらぺこしょうねんが きのみに むかって てをのばして ジャンプしているのを みつけた。あのこは、 なにしてるんだろう? そらを とべばいいのに。 とびかた おしえて あげようかな? あれれ、 でも つばさは もってないみたいだ。 それじゃあ、 とべないか。 きのみに むかって てをのばしてるから、 きのみが ほしいんだな、 きっと。 さっき、 あまくて サクサクしたの もらったから、 とってあげようかな?

ぴゅーーーんと きのみまで とんでいった ちっちゃいこうもり。 はらぺこしょうねんと ばちっと めがあった。 
はらぺこしょうねん、 「それ、 それ、 おとして! おねがい!」と おおきなこえで さけぶ。 ことばが わからない かもしれないから、 テレパシーも おくる。
ちっちゃいこうもり、 ことばは わからなかった。 テレパシーは きがつきも しなかった。 けれど、 「あのこは やっぱり これが ほしいんだ」、 そういってるに ちがいないと じしんたっぷり。 
きのみに とびのり、 おもいっきり 3かい ジャンプすると、 ぐらりと ゆれて きのみが はらぺこしょうねん めがけて おっこちた。

はらぺこしょうねん、 ナイスキャッチ!
つかんだままの いきおいで、 きのみを がぶり!
「おいしー---!」と いって ぜーんぶ がぶりがぶりと たべた。

ちっちゃいこうもり、 きのえだに さかさまになって、 そのようすを ながめた。 「おいしいものなんて そこらじゅうに あるのに、 にんげんって おおげさだなあ」と つぶやいて、 ふわああと あくびをひとつ。ゆめのなかへ。

きのみで おなかいっぱいに なった しょうねんも、 ころんと しばふに ねころんで すやすやと ゆめのなかへ。

最後までお読みいただきありがとうございます♡読後にちょっと心がぽかぽかするような、弾むような、そんな文章を書けるようこれからも続けていきます。ピンとくるものがありましたら、サポートお願いいたします。作品というかたちにして、お返ししていきます。