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大きな木


さらさらとささやくような葉の音に上を見上げると、
赤く色づいた葉がやわらかい太陽の光に包まれて
きらきらと輝いていた。

ぼんやりと見上げていると、なんだか肩の力が抜けてきて、
いつの間にかその場に座り込んでいた。

いつもは何か下に敷いて座るのに、
そんなことは一ミリも考えず、
原っぱの上に座り込むなんて、いつぶりだろうか。

小さなころは当たり前だったこと。
いつの間にかしなくなっていた。

肌身離さず持っていたクマのぬいぐるみは、
手のひらサイズのスマートフォンに代わった。

いつもポケットに入れていたイチゴミルクの飴は、
目覚まし代わりのミントタブレットに。


「たまにはいいよね…」とつぶやいた。

そのとき、遠くで鳴いた鳥の声が
「いつでもいいんだよ」と言った気がした。


ただただ何も気にせずにいられる時間。
この木の下にいる間は、
どんなものからも守られているような、
特別な、静かな、清らかな場所。

さらさらと揺れる葉。
「いつでもおいで」と言っているみたいだ。

ずっしりとした幹。地面深く伸びる根っこ。
何があっても、この木はそこにあり続ける。

心の中でシャッターを切る。
そっと写真立てに差し込む。

いつでも、まっさらな私であるために。
いつでも、この場所を思い出せるように。


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