感想 『燃えつきるまで』 唯川恵

『燃えつきるまで』 唯川恵 幻冬舎文庫

小説で,読んで良かったと思うのは初めてだ。

小説のなかで怜子が私の代わりに失恋のショックから立ち直ってくれた。

私の代わりに病んで狂ってくれたから,冷静でいられる気がする。


この本は涙腺崩壊ポイントが多すぎた。10回ぐらい泣いたんじゃないだろうか。別れを告げてくる時の相手の妙に冷静な感じ。悩んで悩んで連絡をした時の,何も気にされていなかった感じ。傷ついているのを前面に出してしまった時に,優しく謝られる感じ...。

すぐに口説き落とされてしまったり,他の人まで信じられなくなってしまったり。

でも何より辛いのは,相手のことがわかってしまう時かな。こんなに知っていることが,思い出の多さ,深く関わってきたことを思い知らせてくる感じ。籍を入れる日がわかってしまうのは辛すぎる。

どうやってこの物語が終わるのかドキドキしていたが,最後に落ち着きを取り戻せて本当に良かった。これは,物語がハッピーエンドで良かったとかそういうことではなくて。

「私が悪いわけじゃないのね」
「もちろんだ。怜子が悪いわけがない。悪いというなら俺の方だ」
「ううん、耕一郎も悪くない。ほんとよ、今、本当にそう思ってる。こんな簡単なこと、どうしてわからなかったのかしら」

このやりとりで,私の今までの失恋全てが消化されたような気がした。

いつも何が悪かったのか考え込んで病んでしまっていたから。

人間として気づくべきことを気づかせてもらって,成長できることを見つけたら,あとは悩む必要もないのかもしれない。

それでも私の方に問題があったのでは,これからもそう考え続けてしまうかもしれないけど,でもモヤモヤするのではなくて,すっきり冷静に自分を見つめ直して前向きに生きていけるような気がした。

ある意味自己啓発本みたいな小説だったな。笑

物語としても共感すごいし泣けるし面白くて最高だけど,学びが大きい一冊でした。

唯川さんの本は二冊目。さらに気に入った...。


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