#2 ハードウェアスタートアップって辛い?お金について

前回の記事でハードウェアスタートアップの辛さについてSaaS系と対比して以下の5項目を列挙しました。

1.お金が先に出ていく
2.時間がかかる
3.資金調達の難しさ
4.オフィス自由度の低さ
5.ハードウェア開発でしか発生しない問題

今回は【お金が先に出ていく】についてもう少しエピソード交えて話して行こうと思います。

お金が先に出ていく

①機材/工具の購入費
②機材/工具の保守費用
③材料費(多めに買ったり、購入ミスったりも)
④エンジニア報酬(メカ/エレキ/ソフトなど関連分野が多いので人数(コスト)も増えがち)
⑤家賃(オフィスがほぼ必須・人数や機材や試作が増えるとより広い場所が必要)
⑥量産では先に材料費・金型作成・工場確保など数千万かかる(これから売って利益を生むものを作るから売上ゼロなのに先に大きなお金が必要)
⑦ベンチャーは信用がないので全て先払いで出ていくので、あとから清算の補助金/助成金だけでは賄えない、売上がないので融資を取るのは難しい、出資による資金調達に頼りがち

機材/工具の購入費/保守費用

まず弊社Ax Robotix(アックスロボティクス)の場合ですが、私がもともとハードウェアスタートアップ向けの試作エンジニアをしていたのもあって200万ほどの機材をそのまま導入したため機材/工具に関する投資は少なめで済みました。
かかった費用は1.5m × 1.5m 加工スペースの大型のCNCの15万(Aliexpress)と、

Aliexpressで購入した大型CNC

フルスクラッチ作った同じく1.5m × 1.5m材料カット用の80W CO2レーザーカッターの50万の2つが大きかったくらいです。

作成中のフルスクラッチ80W CO2レーザーカッター

ちなみに何でプロダクト開発する前にレーザーカッター開発するん?って突っ込まれそうなので言っておくと、当時ロボットベッド(シングルサイズでも97cm × 195cmが一般的なサイズ)を開発していたため、仮にこのサイズの発注を外部に繰り返していたら一瞬で手持ち資金が溶けて何も完成しないまま3ヶ月もたたず終了するだろうと考えていたからです。
別途記載しますが資金調達はエクイティ(株式)を利用すると始めから決めていたものの、バリュエーション(企業価値)が上がらないプロダクト完成前はまだ投資家へのアタックは開始していませんでした。

当時、自己資金200万を資本金として会社を設立したものの会社設立関連で既に50万は出費してしまっていたので残りの費用で高速に試作を繰り返していくためには必須の機材投資だったと思います。(いま考えれば会社設立前にエクイティによる資金調達をしても良かったと思いますが)

量産では先に材料費・金型作成・工場確保など数千万かかる

ハードウェアスタートアップが製品を一般発売するまでに避けて通れないのが量産ですが、トータル概算で数千万円かかるにも関わらず、必ずかかる費用を前払いする必要があります。これから製品を売るのでお金がないにも関わらず、先に金が必要なんです…笑
「何を言ってるんだ?始めから詰んでるゲームじゃないか?」と思われるかもしれませんが、どのハードウェアスタートアップもぶつかる壁です。
この壁を乗り越えるために必要なのがエクイティ(株式)による資金調達です。クラウドファンディングで十分なトラクション(販売台数という実績)を得ていれば融資も使えると思います。
ただ、ロケットや風力発電機のような2Bプロダクトの場合、クラファンは難しいし顧客から受注契約まで結ぶのは難しいのでLoI(Letter of Interest)などの拘束力ない覚書で興味があることを証明する事をトラクションとするかもしれないです。
LoIだけで融資を引き出すのは相当難しいので結局メインは出資による調達になります。PMF(Product Market Fit)が証明される前なので投資家と交渉するのも骨の折れる作業です。
本来ならプロダクトの開発に集中したいところですが、資金調達が始まると(3~6ヶ月)はCEOは資金調達のことで頭がいっぱいになるケースがほとんどで、これが開発の進捗含め色々場所にしわ寄せを生みトラブルが発生し始めます。

次回は【時間がかかる】についての記事を書きます


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