ノックの意味
スーパーで一週間分の食料や雑貨品をまとめ買いした後、フードコートのカウンター席で昼食にラーメンを食べた。税込み313円。でもこれがけっこう美味い。
煮込まれたチャーシューを食べていると、目の前の窓から視線を感じた。顔を上げると、三歳くらいの女の子が立っていた。青のワンピース姿で、目のおおきな女の子だった。
女の子は、こんこん、と窓をちいさな手でノックしていた。
私も箸をおき、こんこん、と窓をノックした。
女の子はまた、こんこん、とノックした。私ももう一度返した。
こんこん。こんこん。
こんこん。こんこん。
何度かノックをし合った。
なんかいいなあ。ほんわかした気持ちになっていると、女の子は窓のそばの棚で売られていたたこ焼きのパックを手にし、こちらに向けて差し出してきた。
ん、と首をひねっていると、お母さんがやってきた。女の子はたこ焼きのパックを棚に戻すと、手を引かれ去っていった。こちらに振り向くことはもうなかった。
「たこ焼き、くれるつもりだったのかな。いい子だな」
私が微笑みとともに言うと、隣からパートナーの声がした。
「買ってくれって、言いたかったんじゃないの」
パートナーは冷やし中華をずるずるとすすった。
ああ、そうっすよね。
いただいたサポートは今後の創作、生活の糧として、大事に大切に使わせていただきます。よろしくお願いできれば、本当に幸いです。