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いのちの削ぎ落とし

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2022年4月の記事一覧

掌編「カッシアリタ」 春の歌

掌編「カッシアリタ」 春の歌

 電線が幾本も走る窓から、春の日差しが差し込んできていた。やわらかい毛布みたいな光だ、とリタはずっと待ち望んでいた陽を、あぐらをかいた姿勢で全身に受けた。
 あったかい。
 ついつぶやいてからふと思い立ち、着ていたクリーム色のパーカーとTシャツ、膝が擦り切れはじめたジーンズを脱ぐ。下着も取ろうか、と思ったが、まださすがにそこまでやるには寒そうなのでやめた。
 半裸のまま、床の上に大の字になる。胸元

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