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思い出は全部青くなって消えた

 日常と非日常を彷徨う小僧、アツシグラウンドです。

「時々は思い出してよね」

 そう言って君は死んだ。バカ。忘れられるわけないじゃん。君がおいていったトレーナーから、微かに君の匂いがして、苦しくなってタバコに火をつけた。タバコも君の匂いだった。君のお父さんが、辛いだろうからって荷物をほとんど持っていったけど、これだけはどうしてもって言ってしまった。私が馬鹿だった。カレンダーに目をやると、3日後に赤い丸印がついていた。君の23歳の誕生日か。涙は枯れてしまったのだろう。悲しみだけが雪のように積もり、溶け出すあてもなく固まってしまっている。君は曲を書いていた。私は全然興味もなかったから、聞き流していたけれど。部屋を片付けていたら、君の歌詞ノートが出てきた。開いてみた。

「ピストル」

おそらく曲名。

悪気はないんだろうけどさ
悲しくなったから
切なくなったから
頭を撃ち抜いた
寂しくなったから
怖くなったから
優しさとかそんなもの
最初から持ち合わせていないぜ
夏の風に身を任せて
煙を吸ってしまう
哀愁とかそんなもの
感じられるほどに余裕ないぜ
優しい君の手のひらで
踊っていたいぜ
あなたといることが怖くなったから
頭を撃ち抜いた
怖くなったから
怖くなったから
優しくないけどそばにいるよ
君がそこで泣いていたから
悲しくないけど笑ってみてよ
君がそこで泣いていたから
どこからか聞こえた銃声は
君とのお別れの音
それからの毎日は
地獄なんだろうな
自業自得だよな


 言わせてもらうけど、君は君が思う以上に優しかったし、私が思う以上に馬鹿だった。抱え込まないでよ。死にたくなったら教えて欲しかったよ。君との思い出は全部青臭くて、固まった氷は恥ずかしさで溶けた。

 冬が嫌いになったのは、君を思い出すからでもなく、単に寒いからでもなく、、、

カラッとした空気が膨張して、見えなくなった日常の片隅が私を
笑っているように思えたから。

君のダボダボのトレーナーを着て、大学に向かった。


以上、創作です。

アツシグラウンドのファーストシングル
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