「脳は差分に反応する」
◆「馴れるということは何と恐ろしいことであろう。馴れることにより感謝すべきことを、不満の種にしてしまうのだ」(三浦綾子)
■人間は馴れる
子供の頃、お手伝いをした時に、お小遣いをもらったことがありました。
最初は、嬉しくて、お手伝いのネタを探して、どんどんしていったのですが、ある時から、お小遣いをもらえなくなり、お手伝いへの動機を一気に失ってしまったことがありました。
同様の事象は、コロナ時の補助金等にも当てはまります。補助金をもらうことに慣れてしまうと、その補助金が終了する時に、「反対団体」ができてきます。
善意から行われた施策が、終わりを告げるときには反発や恨みの対象となることは、残念ながらよくあることです。
掲題の三浦綾子さんの言葉は、まさにそのことの恐ろしさについて示唆していますね。
■脳の可塑性とホメオスタシス
理化学研究所では、脳の神経回路の可塑性(現状を当たり前にする変化)と、ホメオスタシス(体内環境を一定に保つ生体の恒常性)との関係性について研究されています。
進化論の視点からも、人間が適応力を高めていく過程において、脳が可塑性という性質を持つことにより、経験を記憶したり、経験をもとに学習したりすると考えられています。
そして、環境や体験による刺激が変化すると、脳はこの変化(差分)に反応して新たな神経回路を形成し、学習や記憶、適応のプロセスを通じて恒常性を維持しようとします。
言い換えれば、脳は、絶対的な価値を認識できずに、差分に反応すると言えるかもしれません。
■「アメとムチ」の功罪
その観点からは、企業でよく行われている「アメとムチ」的なマネジメント、特に、業績を達成したら、給与を上げるというような「アメ」施策は、逆効果であることが分かります。
これは、脳が差異にのみ反応するため、一度設定された報酬が「当たり前」になると、その効果が失われるということですね。
また、前回述べた「味方にしたい「習慣」」も、脳のこのような性質から生まれてくるのかもしれません。
これらの知見を基に、人間の行動やモチベーションの基本原理を理解することが重要ですね。
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