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そして、次の曲が始まる 特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~【アニメ感想文】


あらすじ

新部長・久美子を待っていたのは、アンサンブルコンテスト――通称“アンコン”に出場する代表チームを決める校内予選だった。 無事に予選を迎えられるように頑張る久美子だが、なにせ大人数の吹奏楽部、問題は尽きないようで……。 様々な相談に乗りながら、部長として忙しい日々を送っていた。 部員たちがチームを決めていくなか、肝心な久美子自身はというと、所属するチームすら決まっていなくて──。

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感想

いつも通りネタバレが含まれる。
今回の私が感じた感動はネタバレの影響を受けやすい箇所だと思うというか、これまでのこの作品の積み重ねを見てこそだと思うので未視聴の方は一からの視聴を勧めます。

高校の吹奏楽部を舞台にした作品だ。1年生の頃に同級生との人間関係や先輩との上下関係に辟易していた黄前久美子がいまや部長である。

今作の作中でも描写されるが久美子は人への観察力がある。もともとは一歩引いた姿勢が冷めたように捉えられることもあったが、過去作で彼女が姉との軋轢から必要以上に人との関係に踏み込まないようにしていた距離感は作品と共に良い意味で足を前に踏み出すようになり、等身大的に悩む弱さを見せながらも冷静で広い視野を持つようになった(等身大”的に”なのはあすか先輩が見抜いていたように久美子は状況におけるおおよその正解である立ち回りはわかっているがそれを実行に移すことを億劫と思う性格をしているため)。本人は未だに自信なさげな部長業だが備え持つ公平性や人間関係におけるバランス感覚の良さ、強い人間への強さを獲得するに至ったメンタリティへの尊敬と弱い人間への慈悲と理解と少しだけ背中を押してあげたいという絶妙な踏み込み方がちょっと強すぎてビビる。こんな女子高生おらんて。パーフェクト久美子。彼女は今や友達からも部員からも厚い信頼をおかれるようになっている立派な部長だ。今だと逆にあすか先輩を手懐けるのは難しそうとか思ったり思わなかったり。まぁあの音楽マシーンも久美子にあれだけ打ち明けたら順調にいけばしっかり大人になってそ……いや、どうだろう。……よそう、この話は。あ、私はあすか先輩が一番好きです。

そんなあすか先輩は卒業している作品な訳だが、素直に、正直にこれまでで一番面白かった。私はスタート時はクオリティの高い作品だなぁくらいでハマってる!って作品ではまったくなかったのだが、なんだかんだと長く観ているから関係性の変化やキャラクターの成長がバスバス刺さるようになってしまった。
なにより葉月と麗奈が同じチームであるということに感動して仕方なかった。諦めずへこたれず頑張ってきた葉月もキングオブ負けず嫌い麗奈が人の努力を認めて高校からの初心者と組むということもどちらも人間的な成長が見られて良かったねぇ……良かったねぇ……とおじさん序盤で涙してしまった。

パーフェクト久美子は主人公であるので成長の過程が丁寧に描かれてきた。家庭の不和も解決されたし、音楽への姿勢も改まったし、日々裏打ちされる練習量も描写されるし、なんか観察力すごいし、窓だって開けちゃう。それと比べていわゆるモブキャラ達の努力は見えづらい。葉月は主要キャラ寄りではあるし、それでもこの作品はモブも描写している方だし、そもそもそれが好ましくて見ている人も多いだろうが(今回もアンコンの優勝は違うチームだったことからも部としてのレベルが高まっていることを描写している)、それでも久美子ほどではない。

そんな中で葉月と麗奈がさ……チーム組むってもうね……ってなってたところでパーカスの釜屋つばめである。実力はあると評されているのにずっと自信がなかったつばめ。彼女を口説くのが葉月というのも葉月が部全体から努力を認められているんだなぁ、そんな人が麗奈と組むのに自分は……なんてビビってられんよなぁとグッとくるところだったし、練習していく中で他人のブレスを意識してなかったことによりリズムが合わないという致命的な弱点を久美子に指摘され劇的な改善を見せた後で自信をつけ、次のコンクールメンバーに入ることを目指してもいいのだと思えたと久美子に打ち明けるシーンもあって、だから私はそういうシーンに弱いんだって……。

自分がそういう積み重ねる努力が下手な人間で既に出来る人の今を思わず羨んでしまうところがあるせいで、その積み重ねる努力をしている子を見ると泣いちゃう。ほんにえらかねぇ……えらかねぇ……。

あとはもう手伝ってくれる先輩たちも可愛いし、みぞれが断るのも良かったし、奏がなんか異常にあざと可愛いし、麗奈にじゃれつく久美子のモフモフが可愛いし、川島サファイアは相変わらず立派な先輩だし、随所でみんな良かった。

最初に書いたように長く観てきたが故に(最初のころの私の観る姿勢が悪かったという話もあるが)今回はめちゃくちゃ北宇治高校吹奏楽部を感じる作品で、もう久美子が入った部活の話だけではなくて、先輩が卒業し、自分たちの学年が上がり、新入生が入ってさらに時間が経ったことで、吹奏楽部のみんなが過ごしてきた時間というのを凄く感じて、作品を観ている時の熱量に私自身が視聴してきた時間も混ざってくる。こうなるとコンテンツって強いんだ。ちょっと今1話から見直したい気分です。

これまで長い間推してるコンテンツの長い間推してるが故の良さってのをあまり意識したことがなかった。いや少しはあった。少しはあったのだが、だって長い間推すってことは初めから好きだったものであることが普通だから感覚として理解するのが難しかった。私の場合は型月だったり、エヴァだったり、漫画や小説の長期連載作品だったり、対人ゲームコンテンツだったり、それ以外のものは楽しむだけ楽しんだら基本距離を取って離れてきた。物事を楽しむには楽しむ姿勢、理解しようとする姿勢というのが大事だし、その前提を踏まえず拘泥して文句を吐くようになってしまう行為は嫌いだし、時間は有限なのでそうしないと人生が足りなくなってしまう。ある程度はそういった行為も必要だとは思っているのだが、ただこのユーフォニアムは始まりが友人からのオススメで、話を合わせるためにという部分もあり積極的な好意の感情で観てきた訳ではなかった。その時々で最優先で観たい!ってものが無いけどクオリティの高い作品が観たいなーって時に観る。みたいな観方をしてきた。それが今回でバチッと自分の中で好きなコンテンツ枠に切り替わった。それゆえに長く観てきて関係性を理解しているからだということに気づくのが容易でこんな感情の切り替わり方があるのか!と勝手に感動してしまった。
またひとつ自分の視点の狭さに気づいたというか、この観点で未熟な作品視聴をしてしまっていた作品があったのだろうなと反省するというか……人生は長く生きているとそれだけ学びが増えるものだ。

そういったことに気づかせてもらえた意味でも響け!ユーフォニアムは私にとって得難い作品になった。来年4月から響け!ユーフォニアム3が放送開始されるとのことでそれを楽しみに待とうと思う。原作も読もうかな。


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