ウイルスや花粉を低減するチェア、誕生。オフィス家具の固定概念を覆す、内田洋行の挑戦
新型コロナウイルスの流行を受け、すべての企業に徹底した感染予防対策が求められている昨今。冬にかけてインフルエンザも増えてくるため、人が集まるオフィスでも安心して過ごせるようにと、各社があらゆる手を尽くしていることでしょう。
そんななか、「ウイルスやアレル物質を低減するオフィスチェアが発売した」というニュースが飛び込んできました。
マスクでもなく、除菌スプレーでもなく、オフィスチェアでウイルス対策。はたして、本当にそんなことが可能なのでしょうか‥‥?
その真相を探るべく、私たちは販売元である株式会社内田洋行を訪問。オフィス商品企画部 部長の門元 英憲さんに、話題の新チェアの効果や開発秘話、今後オフィス家具が担う役割についてお話を伺いました。
ウイルスや花粉を低減する「アレルクリーンプラス」を使ったオフィスチェア
── 「インフルエンザや花粉症対策として有効なオフィスチェア」と聞き、今日は興味津々でやって来ました! まずは製品の特長について教えてください。
今回新しく発売したオフィスチェアには、自動車メーカーのホンダさんが開発された「アレルクリーンプラス」というクロスを使っています。(※1)これは、抗ウイルス剤(芳香族ヒドロキシ低分子タイプ)、抗アレル物質剤(芳香族ヒドロキシ高分子タイプ・リン酸ジルコニウム)を染み込ませた、特殊な生地なんです。
── 「アレルクリーンプラス」には、どんな効果が確認されているんですか?
アレルクリーンプラスは、インフルエンザウイルスを99.9%以上不活性化させ(※2)、ヒトの細胞への進入を防ぐことができます。ダニやスギ花粉のアレルギー物質にも、同等の効果を発揮。直射日光や摩耗などのダメージでも効果が変わらない耐久性を、国際基準試験で確認済みです。
春先の花粉症の時期から、梅雨から夏場にかけてのダニの流行シーズン、冬場のインフルエンザの流行時期まで、1年中効果を発揮できると期待されます。
また副次的な効果として、インフルエンザウイルスや花粉を低減してワーカーの健康に寄与することで、業務中のパフォーマンス低下を防ぐことができます。
── まさに画期的な素材ですね!今回、まったく別業界であるホンダさんとコラボされていますが、どんな経緯だったのでしょうか?
ホンダさんとは、両社の知的財産部門の担当者のつながりがあって、そのご縁から1年半ほど前に「ホンダの技術を活かして新しいオフィスチェアを一緒につくろう!」という話が持ち上がって。
「アレルクリーンプラス」は、「N-BOX(エヌボックス)」や「N-WGN(エヌワゴン)」などのシートに使われていて、すでに数年の販売実績があったことが一番の決め手でした。また、両社の向いている方向が似ていたことも大きいですね。ホンダさんも当社も、製品を使う人のことを何より大切にしながらプロダクトをデザインしていて、ものづくりに込める思いが合致していたんです。
とはいえ、やはり車のシートとオフィスチェアとではまったく形が違いますから、製品化までには苦労も多かったですね。
── 具体的には、どんな苦労があったのでしょうか?
自動車業界のクロスというのは、家具業界のそれに比べて、ロール(生地を筒状に巻いたもの)の幅がかなり広いんですよ。そのため、当社が普段使用している機械では、「アレルクリーンプラス」をカットするのが難しくて‥‥。工場を探すところからスタートしなければなりませんでした。
あとは、一般的なオフィスチェアに使われる生地とは性質が異なるので、型紙を新たに用意したり、ちょっと特殊な張り方をしたり。クロスの伸縮性の違いから、デザイン的な観点で相性がいいアイテムを選定するのも大変でしたね。
ウイルスとの共存が求められる時代。働く人々に、少しでも安心感を届けたい
── 7月末に新商品を発売されましたが、3月頃からは新型コロナウイルスの流行が深刻化していましたよね。発売を控え、この情勢をどう捉えていましたか?
本プロジェクトに対してGOが出たのはちょうど3月頃で、まさにコロナの本格的な流行と同じタイミングでした。プロジェクトが正式に動き出した翌週から、当社も在宅勤務になりましたから。
でも、コロナの流行は新チェアに注目が集まるきっかけになるだろう、とは思っていました。新型コロナウイルスには試験方法が確立されていないため、「アレルクリーンプラス」が効果を発揮するかどうかはまだ検証できていませんが、日本中でウイルスに対する関心が高まっていますからね。
── リリース後の反響はいかがでしたか?
発売からあまり間がなく、受注生産だったこともあって、実はまだ納品できていない状態なんです。そのため、実際に使ってみての感想というのは聞けていませんが、すでに引き合いは多くいただいていますよ。
「コロナウイルスには効くの?」「効果はどれくらい続くの?」などさまざまなご質問をいただいていて、多くの方々が興味を持ってくださっていると感じています。
── ウイルスとの共存が求められるなか、この新しいチェアはどんな役割を担うと思いますか?
日本中の方々が不安を抱えていると思うので、まずは少しでも安心感を提供できたら、と考えています。「アレルクリーンプラス」のコロナウイルスへの効果はまだ検証できませんが、アレル物質やインフルエンザウイルスから健康を守ってくれるオフィスチェアがあるということは、これからの時代、大きな価値になるのではないかと。
当社としても、これまで以上に提供価値の幅が広がったと感じています。今回のプロジェクトを皮切りに、さまざまな観点からオフィス家具の可能性を広げていければと思います。
オフィス家具が、これからの仕事をつくっていく
── 内田洋行さんは、チェアなどのオフィス家具を提供するだけでなく、オフィス全体のコンサルティングも行っていますよね。
そうですね。2012年からは、ワーカーが自身のアクティビティに応じて自由に働く場所を選択する「アクティブ・コモンズ」を提唱し、それに則ったオフィスづくりを手がけています。
アクティブ・コモンズは自社オフィスでも実践しており、その一環であるフリーアドレスは、10年以上も前から導入しています。
── 随分前から働き方の変革に取り組まれているんですね!アクティブ・コモンズというのは、話題のABW(アクティビティ・ベースト・ワーキング)とどう違うんですか?
場所の選択肢を広げて一人ひとりが自由に働けるようにする、という意味では同じです。ただし、アクティブ・コモンズは、単に働き方だけを指すのではありません。組織の活性化やワーカーのモチベーション向上などといった、働き方改革の先にある変化にもフォーカスしています。「アクティブ・コモンズ=ABWの上位レイヤー」と言えば分かりやすいかもしれませんね。
コロナ後は、働く場所や時間の選択肢がどんどん広がってくるはず。アクティブ・コモンズを反映したオフィスのニーズは、ますます高まってくると考えています。今後もより積極的に、多くのお客様に提案していきたいですね。
── そのなかで、オフィス家具はどんな役割を果たしていくのでしょうか?
オフィス家具は、ワーカーの仕事の成果に深く関わるもの。例えば、チェアやデスクの高さによって、使う人の視線が変わり、思考にも影響を及ぼす、と言われているんです。時代の推移とともに、仕事の内容や求められる思考は変わっていきますから、それに合わせてオフィス家具も進化していく必要があると思います。
お客様にもぜひ、“家具と会話する”ように、もっとオフィス家具と深く向き合って選んでほしいです。そのために、私たちはお客様の働き方やニーズに合わせて、最適なオフィス家具を提案していきたい、と思っています。
── これからのオフィス家具には、使い心地や性能だけでなく、さらにその一歩先が求められそうですね。今後も画期的なオフィス家具を生み出してくださることを期待しています!
interview by Kagg note編集部 / text by 中島香菜 / photo by 森田剛史
(※1)「アレルクリーンプラス」は本田技研工業株式会社の登録商標です。
(※2)出典:Honda社内実車測定値。病気の治療や予防を目的とするものや、ウイルスの働きを抑制するものではありません。
株式会社内田洋行
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