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妻は僕に、沢山の物語を残してくれた

 私が書いている作品は、歴史時代小説とハードボイルド以外は、自分の体験を書き記したものばかりです。たとえば「娘の結婚」の話や「二人の息子たちと登った初めての谷川岳」とか、「妻との出会い」とか。
 文章を書きながら、今は亡き妻が私に残して行ってくれたものが沢山あることに気付かされました。生きているときは、癒しも優しさも、勇気もセックスも、そして二人の息子と娘一人と沢山のことを、私に与えてくれました。
 でも、亡くなった今も、私に書くためのテーマを沢山残して行ってくれました。私は、彼女からもらうばかりです。何も返してあげられない自分の不甲斐なさを、また同時に感じています。
 全く赤の他人のおばあさんに言われたことを、思い出します。
「奥さんを亡くされて、あれもしてやればよかった、これもしてやればよかったと、後悔していると思うけど、それでいいのよ。それで……」
 と言われたことがあります。おばあさんのその一言で、気持ちが楽になりました。
 私にとって歴史時代小説やハードボイルド以外に「私小説」を書いていくことも含めて、せめてもの“彼女への感謝”の気持ちの表現です。だから、書くことはやめられないのです。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。