見出し画像

直木賞作家との、彼我の距離 ー②

 小説を読んでいて背筋をぴんとさせられ、凛とした気持ちにさせらる作品に、何十年ぶりかで出会った。直木賞作家の真価を見せつけられた。
 それと同時に、
『こいつには、到底敵わない』
 と、不遜な事を感じてしまった。
 しかし、そうと気付くことは、相手を乗り越えていくための『端緒』についた事も意味する、と自分を励ました。
 確かに、前を行く彼と、後を追う我との距離がぼんやりとではあるが、確かに見えた訳であるから。確実に見えた『彼の背中』を、これからは見失わない様に追いかけていけば追いつく可能性が、わずかばかりでも見えたことには、間違いない。あとは時間との戦いである。
 ここから先は、出来得る限り効率の良い方法を取らなければ、彼に追いつく前に……。
 彼我の距離が見えたと思えた瞬間から、『彼にあって、我に無い物』を一つ一つ、頭の中で確認作業が始まった。
 最初に気付いた事は、一流の絵画を見分ける『眼力』が、私には無い、ことである。どうやって自分自身の日本画を見極める眼力を高めればいいのか。今、思い浮かぶ事は美術館に通って、多くの日本画を見て来ることぐらいしか、思い浮かばない。
 こんな程度で、彼我の距離を縮められるのだろうか。次は、焦りを感じはじめた。小説を書くということは、げにも厄介なものであり、楽しいものである。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。