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帚木(ははきぎ)の帖、光源氏と男友達三人の女性体験談より

 帝の妹君腹の頭中将(とうのちゅうじょう)とは従兄弟同士で、特に仲が良かった。彼も光源氏に負けず劣らず美男子である。光源氏が正妻の葵の上の元にあまり帰らないのと同じように、頭中将も正妻のいる右大臣の邸宅にはあまり帰りたがらない。そんな二人が時間を持て余して、いずれからともなく話し始めた。
「これはと思える女で欠点のない女なんていないものだ、と最近わかりました」
 と、目の前の光源氏宛のいくつもの手紙を眺めながら頭中将は語り始めた。いつしか二人の間で女性談義が始まっていた。
 そこへ仲の良い左馬頭(ひだりうまのかみ)と藤式部丞がやって来て、女性談義の輪に加わった。
 話は多岐に及んだ。
① 家柄と女性の気質
② 世間の評判と家柄との間にギャップのある女性
③ 上流公家の女性
④ 家をよく守る女性
⑤ 文才に優れ、所作も美しく、風情もある女は、それが「難」である女性
⑥ 家事をしっかりこなしてくれるが、世帯じみている女性
⑦ 自分をよく知る女性なら、語り合って共に笑ったり、時には仕事の愚痴を言ったりして心を一つにできる女性
 ⑧ 情愛の深い夫のこと
⑨ 浮気な女の物語
 などなど、話は尽きない。
 そもそも、源氏物語は浮気性の光源氏と宮中の女性たちとの顛末の話だと思って読んでいた。すると読み進むにつれて平安時代の男女、それぞれの悩みや憧れが、包み隠さず書かれていることを知らされる。まさに一千年の間、男女の関係の変わらぬ心の内が書き留められている、と感心させられる。さらには人の心の内の進化の無さも思い知らされる。
 上級国民の間の一婦多妾制から一夫一婦制に世の中の大勢が移り変わってはいるが、一人一人の心のうちはあまり変化していないようだ。
 さて、これからの一千年の間に男女の心の関係性は進化するのだろうか。千年後の男女のために、何か書き残したいと思う。という前提で現代の男女の関係を余す所なく書き表すための状況設定は、どこにすべきか。候補をいくつか上げてみる。
① 歌舞伎町のホストクラブ
②新宿大久保公園脇
③六本木のキャバクラ
④銀座の高級クラブ
 この辺でやめた方がよさそうだ。状況設定を列挙しながら、狭小な自分の世界観に悲観的になって来た。自分の恥の上塗り以外の何ものでもなさそうだ。



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