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自力で、自分の地位改善をする努力を…

 私の仕事は、会社のスタッフや重役の方を送迎するハイヤーの運転手である。一つの会社で5年間、仕事をさせてもらっている。
 他に、もう一社、ハイヤーの会社が私の職場に入っていて、2名の運転手が常駐している。私と合わせて3人が控え室で、次の出動を待っている。
 他社の運転手の人が時々、人員の問題で、マスコミの他の会社の記者の運転手の仕事をして、いつもの仕事に戻ってくる。その時、よく溢していた言葉がある。  
 それは、こうだ。
「テレビ局の女性記者は、私のことを車の一部のようにしか考えていない。腹が立ってくるよね。俺だって人間なんだと、怒鳴ってやりたくなる」
 と言っていた。確かに、そういうことはあると思う。
 私も元を正せば週刊誌の記者だった。しかし、四六時中、ハイヤーを使っていたわけではないので、たまたま充てがわれたハイヤーの運転手に対して、仲間と同じように必要最低限の礼は欠かさない程度には、接していた。時には弁当を買って来てあげたり、お茶を買ってきてあげたり、仲間のスタッフに対するのと同じように対応していた。
 しかし、前出の彼のような愚痴は、業界ではたまに耳にする。実のところ、いま私が常駐している会社でも、僕が配置されたことは、似たような雰囲気があった。そのとき思ったのは、
〝前任者は、そういう対応をされてしまうような仕事の仕方をしていたんだろう〟
 と感じた。そこで、自分は、できるだけのことして、自分の地位改善に努めようと思った。その甲斐あって、今では、社長に自分の小説を読んでもらったり、定年退職した役員の方には、
「あなたの車に乗って話をしていると、なんだが元気をもらっていますよ」
 と、お褒めの言葉をいただいたり。さらには中堅のカメラマンからは、
「僕のことをどう思っているか、周囲にちょっとリサーチしてもらえますか」
 とご依頼をいただいたり。さらには、若い女性カメラマンからは、
「指名料を払ってもいいから、あなたのクルマに乗りたいです」
 と、最高の褒め言葉を、いただけるくらいになった。本当に、嬉しいことだと思っています。
 くだんの愚痴の彼に、この話をすると、
「営業の世界では、そのようなことを〝窓を開ける〟というんです」
 と言っていた。多分、風通しがよくなったという意味だろう。転じて、こちらの意見を聞いてもらえる環境が出来てきたというようなことを、意味してるんだと思うが。そういう言葉で彼は、私がこの職場でやってきたことを評価してくれた。

 ちなみに次に「窓を開ける」努力をしなくてはいけないのは、Kindleを通じて私の作品を見てくれている読者に対してだろう。ターゲットが明確になれば必要とされれる努力の内容も、明確になる。あとは実行するのみだと、思っている。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。