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夢中になって追いかけた音

 自分の歌声を掴みたくて、音大の声楽科を出た先生の所に、しばらく通った。レッスンは、先生のご自宅。20畳ほどの部屋にグランドピアノがあり、その脇に立つ。先生のピアノの伴奏でレッスンを受ける。
 部屋は、適度に声が響くように、音響効果を考慮した作りになっている。ここのレッスンで「歌うことは、楽しい」という感覚から、「歌うことが、気持ちいい」という感覚を感じた。人生で、小学生のころ以来、忘れていた感覚だろう。
 先生の所に通い始めて、半年余りが過ぎた時、
「当初の目的だった、自分の声を見つけるという目的は、達成できましたね」
 と、卒業を言い渡された。さらに、
「あとは、自分で歌い込むだけです」
 とも。
 あの日から、1年余りがたった。その間にバンドは解散し、YouTubeの動画もストップしている。どうしていいか、自分では手詰まりの状態だ。
 夕方、帰宅の途中、ラジオから流れてくるスガシカオの「黄金の月」を聞いて、ハッとした。3年前にバンド活動を始めたころ、夢中になって追いかけていた音のメソッドを、思い出した。
 もう一度、音楽の歩みを踏み出せそうな気がした。

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