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「エロとアカデミック」を行ったり来たりの若造の日々

 先日は、カメラマンの上の方の人と「団鬼六」の話で盛り上がった。彼は、教師志望だっとか。話は宇能鴻一郎にまで及んだ。

 その筋の巨匠・宇能鴻一郎の伝説的官能小説でタイトルが『むちむちぷりん』(徳間書店)というのもあるが、それは置いといて。
 宇能鴻一郎自身は、東京大学大学院在学中に芥川賞を受賞し、その後、官能小説家に転身するという異色の経歴の持ち主。20代前半、彼の特長的な主人公の、OLみたいな語り口調にハマってしまっていた。

 私の20歳台は、「エロとアカデミック」を行ったり来たりしている日々だった。まず、たむろしていたのが新宿ゴールデン街。

 そこは、芸術家の卵と小説家の卵と演劇人と写真家志望と音楽家志望の若造とあぶれた現役が、ごちゃまぜになって酒を飲んで、言いたいことを言い合って、罵り合いながらも、お互いの夢を尊重しあっていた、そういう日々だった。喧嘩もするしナンパしてセックスもして、話し合ったら兄弟で。友情もゲロもエロも芸術も政治も、全部ゴチャマゼ。

 これと言った人生に対する武器を持つことができない、そんな若造にとって「エロ」は、お手軽だけど、最高の表現のための武器だった。

 さらにもう一つ、外してはいけない重要な役割があった。それは、人生の一時避難場所でもあったこと。
 たとえば、「ほぼ日刊◯◯◯新聞」で有名な◯◯重里は、若かりし頃の食えなかった時期、エロ本の編集の下請けをしていた。
 また、女流作家として大御所のY・E。彼女の代表作は、黒人とのセックスの話。「彼の匂いでイッてしまう」ような感じの作品。

 私の友人の一人に有名なカメラマンで石垣章という人がいた。いまは故人である。彼は、女性の縛りの写真で、アメリカ版月刊誌のペントハウスのグラビアページを飾った。その彼は、Y・Eが作家として売れていなかったころ、彼女のエロ雑誌用の撮影を引き受けた。その時のこぼれ話で、石垣氏が「Y・Eの股間で、わかめ酒を飲ませてもらったよ」と嬉しそうに語っていた。
「エロとアカデミック」はクリエイターにとして、避けて通れない、永遠のテーマ。


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