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実物は想像以上の情報を、与えてくれる

 俵屋宗達は頭の中でとっ散らかったままで、なかなか筆が進まない。それでも、1日として私の頭から離れたことはない。一日のほとんどの時間、私の頭の中で蠢いている。
 今日、俵屋宗達の研究者の林進氏の本を注文した。林氏の研究を参考に創作が一歩前進することを期待して。
 頭の中が俵屋宗達でいっぱいのはずなのに、ネットで流されている中国のテレビドラマ「君は、花海棠の紅にあらず」にハマっている。京劇の若い役者とイケメン豪商の友情物語である。特に若い京劇役者のセリフに、しょっちゅうハッとさせられて、何度もプリンターの反故紙に筆ペンで書き留めている。ポールペンでもいいのだが、どうも筆ペンを手に取ってしまう。台詞がいくつか溜まったら、それをPCに打ち直す。そうして頭の中のデータベースに蓄積している。
 自分で経験したことのない芸事の世界。何を心の中心に置いて、どんな事に心が反応し、どういう言葉を心に蓄えて来たのか。それは、想像だけでは表しきれない。できれば主人公が辿った道と同じ道を自分でも歩いてみて、そこで見聞きしたものを書き残したいくらいである。それが無理なら、せめて残っている作品に触れたい。そこから五感で感じられる全てを吸収したい。さらにできることなら、その作品が発しているであろう主人公の命の波動を、私の命で感じ取りたい。発しているであろうと思われる微弱な命の残像エネルギーを……。
 そんな、藁にもすがる思いを抱いて、近い内に俵屋宗達の作品を見に行くための京都旅行を計画した。
 限りのある資金から捻り出すのは大変だが、長谷川等伯の時に貴重な体験をしたから、是非に実行したいと思っている。それは、実物の作品は想像以上に沢山の情報を私に与えてくれたという事実である。いま再び、その感動を、今度は是非、「風神雷神図屏風」で感じて来たい。
 

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カゲロウノヨル
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