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小堀遠州は古今集から道具の名前を多く取った、と聞く

 小堀遠州は、古今集の和歌から道具の銘に相応しい言葉を切り取り、それを銘として多くの道具に付けた、と聞く。そんな逸話を元に、私も茶道のお稽古では古今集の和歌の一部からとって、お茶杓の銘を付ける様にした。
 次回のお稽古でのお茶杓の銘は、古今集の小野小町の句からいただこうと考えている。有名なあの句からである。
 花の色は うつりにけりな いたずらに
      わが身世にふる ながめせしまに
 この句の「わが身世」をいただこうと考えている。「身世」は、人生を言うのだろうが「恋愛」の事も意味するそうだ。
 若い頃は魅力的だった容姿も、時と共にあっというまに衰えてしまった。
 春の長雨を見ていると、華やかだっ若い頃が走馬灯の様に脳裏に浮かんでは消えて行く。この先、私の人生に楽しいことは、もう待ち受けてはいないように思えてくる。しかし、本当にそうだろうか、と思い返してみる。
 楽しいことはなかった様に思えるが実際には、この2、3年の間も楽しいことで溢れていた。バンド活動では結局、解散してしまったが、山あり谷ありのそのものが楽しかった。ボーカルの女性に、
「音楽性の不一致ではなくて、あなたの人間性が問題なのよ」
 と言われたのには驚いたが。今では笑い話になっている。
 小説のために始めた茶道も、今では生活の中で重要な位置を占めるようになった。茶道の先生には、
「カゲロウさん。あなたは綺麗な女性がいると元気ね」
 とイジられているが、それすら楽しい。
 さて、「わが身世にふる ながめせしまに」であるが。これからの私の残された人生に、どんな「長雨」が降り注いで来るのか。楽しみである。
 朝の通勤電車の窓から見える春の雨を眺めながら、そんな事を思ってみた。

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