悪い男

悪い男とは、どんな男だろう。

悪い男とは、悪徳に染まった男だろうか。

悪徳。

それは様々ある。

その中でも、最も悪と思われるのは、人に悪を囁き、悪の道へといざなう、イブに知恵の樹の実を食べるように囁いた、蛇のような男だろうと思う。

タルムードによれば、蛇の正体は、サタンという。

サタンとは悪魔のことだ。

悪魔のような男が、悪い男なのだろう。

悪魔とは、宗教や文化などによって様々な解釈がなされ、多種多様な意味がある。

その中のひとつに、煩悩のことを意味するとある。

それは自分のことだ。

僕は煩悩の塊で、悪徳に塗れ、恥辱に塗れている。

個人的には、決して、日の当たる場所を歩いてはいけないと思っている。

泥濘の中に身を潜めて生きていくのが相応しい。

だからこそ、美しいものに憧れている。

憧れるくらい許されるだろう、と嘯きながら、生きている。

煩悩に懊悩しながら、生きている。

花に憧れ、花を崇め、月に魅入られ、花守になりたいと思うのも、煩悩ゆえに…と思う。

僕は既に天国を諦めている。

天国は善人のものだから。

悪人正機に縋り、そうなるといいなあ、と都合良く解釈しながら、善を成さない自らを唾棄している。

煩悩具足の凡夫なのだ。

お前は地を這いなさい、と言われた蛇なのだ。

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