火星鯨類研究所

詩と短歌 Mail: nemurilianbei@gmail.com

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火星鯨類研究所の職員がXアカウントを開設しました。 https://twitter.com/hasukai_nemuri

    • 君からの手傷と音楽

      俯いて歩いてゆけば人道のタイルの組がずれて、転調 転調の合図としてのさよならとそのときどきに覚えたコード 便箋に文字を植え付け送るから君の心で育てて欲しい 友達の女の名前の短くて鳴き声のごとその名前呼ぶ 調律の狂ったギターで奏でたる君との季節、黒きダアリア 憂鬱がさんさんさんさんって鳴り響く、朝日が耳にうるさい月曜 真夜中の歩道で潰れたゴキブリの苦しくってやがて朝焼け 雨降りのなんで青色?降る雨の全てに名前を付けて尋ねた 一枚のガラスを隔て肺呼吸、鰓呼吸してつ

      • やさしい震え

        思い出しつつあった いつか 枯葉のような午睡の中で 目を細めると 姿を得た彼女、が 光の粒に包まれて 拝啓 あなたのあなたがわたしでないことへ 孤独になりたくて、たくさんご飯を食べる 老いた人の耳が行く、場所のことを 思いながら、 何億もの枯れ葉が、空から落ちてくる それらがわたしたちの食卓に降り積もった それからは何もかもが 眩しい 冬の始まり、には 夜空に難破船を隠して 笑っていて 撫でていて 輪郭がゆらゆら揺れていて 次の日の午後、荒れ野で傘を燃やした そうして

        • 台所

          わたしは金属の スプーンがきらい、です 冷たくてにがい 味がするから、です そういった、いつまでも 子どもである舌が ここにいたくない、なんて いっちょまえのことを 言うのでした かなしくて、 やりきれなくて、 冷蔵庫をパタパタ、開け閉めする だれかが言うように だれかがそう言うように、 あるいは、捨ててしまえ ばいいのか もしれません わたしは、いつまでも なにか他に、 食べたいものが、ある 気がして 木のスプーンを持ったまま 台所を、ウロウロしていた のでした

        火星鯨類研究所の職員がXアカウントを開設しました。 https://twitter.com/hasukai_nemuri

          夢の中の風船

          もう何もいらないと思える日没がくる その帳の端にガスライターで火をつける 煙草をふかして夜の長さを計っていた 順番に人がやってきて 彼らと待ち合わせていたことを知った 夢の中で出会う人々は見つめるほど 輪郭が霞む だから各々が誰なのか確かめることはしなくていい 私が 語らなくても 書かなくても 痛みを追いかけなくてもいいという冷たい水を 与えてもらえるのを待って 部屋の隅でじっとしている枯れそうな鉢植え そのような私のすがた を見ていて欲しかった あるいは風邪を引いていた

          冷蔵庫の詩

          砕けた氷がふるえている アミアの夢を見る 冷蔵庫の中にいますから 眠りは死のいとこだから、 眠りたくはないね あまい水滴 かわいい毎日。ですね 荒んでいきます 落ちていきます 塩と約束 ゼリーとお魚 かわいい毎日だけ 君といたいね もっと自由に、 なれるよ ちゃんと聞いてるよ 待ってるよ 溶けていく氷を見ていると なくなってくので、見ないようにした さよなら、お元気で

          Happy Birthday 🎂

          くらやみをよくみようとしてあかりをつけたら、くらやみはきえてしまったの あかり、は、すべてをわすれてひかっている だからこのへやはくらくなくて あかるい きえたくらやみはどこへゆくのでしょう まぶたのうらでしょうか まぶた ✞✞✞✞✞✞ あっ しんでいる 👻 さみしいとはっこうするあかちゃんを、はらんだので わたしのおなか、はいつも、ぼんやりとひかっている うまれるまえって、ずっとさみしかったんだ ❄ しろい しろい ひかりが うたが 🐚 きこえる わたしのことをしらないだれ

          Happy Birthday 🎂

          わたしには、知らないことだらけ 好きな人に触れることが、なぜ犯罪なのか 死ななくても全てを失えるのに、なぜ死ぬのか あたたかい人々の中には、あいとたたかいがあって わたしの中には、なにがあるのか わたしの血はたぶん音楽だから、切りつけてそれを流す そうしてできた血溜りには、逆さまの世界が映っている その逆さまの世界のなかで、叫んでいる人がいる 燃えている街がある 飛ぶ鳥がいる 昼の港がある 船が出ていく いくな! わたしを置いて、どこにも 目を覚ますと窓がある カーテンが

          ずっと

          わたしって、水を待つ鉢植え とびらを開けっ放しにするねこ 床にこぼしてへんてこな形にひろがった牛乳 やる気ないときのぐにゃぐにゃの文字のノート、を ぜんぶここに置いておくから、いつか取りに戻るね。 五万円、返すね。 きみといると、ふつうのことしか思わなくなる。 だんだん声が、くぐもっていく。 (もう部屋がいっぱい。) (逃げ場は、ない。) 迷惑はかけないようにする。 ちゃんとした文字で、手紙を書く。 (だからやっぱり、詩なんて要らなかった。) ところで、ここってきみの部屋

          焼豚

          頭脳を捨てよう 悲しみを捨てよう 怒りを捨てよう 尊厳を捨てよう 豚になろう 豚になって走ろう 糞を撒き散らして 横切るブルーのゴミ箱は友だちさ ゴミ食って寝ちゃおう 夜に目覚めて 子供を踏み潰そう 犬は逃がそう 町を燃やそう その炎で 焼き豚になろう そして互いを喰おう このまま、二人だけの世界で 陽の昇らない世界で

          飛行機と税金と地獄

          ボロ雑巾みたいな 飛行機に乗って 西の崖から飛び出そう そいつが墜落しないよう ゴブリン共に地面を掘らせよう(税金で) そうして地平線の向こうまで 夕暮れを永久に飛ぶ 俺たちは太陽を追いかける 光はすぐに消える 時はすぐに過ぎる 時といつまで踊れるか争う 永久と思い出が争う そうして、俺たちの側が常に負ける ゴブリン共は過労死する 皆の税金はパーになる 飛行機は落ちる 落ちて、落ちて、落ちて 地面に大穴が空く 全てが地獄に落ちる

          飛行機と税金と地獄

          風船を解いて あの日の吐息を 空に返して 少しだけ春風を 強くした そうしたら カーテンが大きく 膨らんだ 風を全身で抱いて 死ぬみたいに 君はまだ隣で 眠っている 朝日の鱗粉に まみれて 蝶々みたいに 起きたら 私が死ぬとき 何を抱くのか そっと告げて その口で キスをして ガラスの足で 荒野を駆け下りて そのまま激しくぶつかって まぶしいまぶしい 光になりたい

          思い出せない.mp4

          瞼の内で降る、温かい永遠 濡れながら、墓を掘った そこに純粋や恐怖を、埋めた オレンジの雨のなか、夢から覚めたら またそこも夢で、顔のない人と風船、飛ばす ふり返ったら、窓 記憶がないという記憶を、なくす 読点が、花びらみたいに降る、空 ずっと眠い ずっと眠い ずっと眠い 遠くから、好きだった人の 声が聞こえる か細く喋っている 夢から覚めても、ずうっと夢なのに お帰りはこちら 黒い記憶へ お帰りはこちら 黒い記憶へ

          思い出せない.mp4

          re

          いつもの川 でいつものパン を食べました これ、おいしいな おいしいな、って 思いながら、 あたまの上をとぶ トンビを睨みつけながら、 わたし、 生きていてよかった と今は 思える? (どう?) (まだわからない。) (はっきりとは。) それらが、ちゃんと 綺麗なことだと 伝えられなかった人が、いて その、私が、 伝えられなかった人が、 昔、おどけて 笑って 笑っていて 笑って 私に正しい煙草の吸い方を教えてくれた その人は 両手を広げて飛んでみせた、 鳥というよりは、十

          ペンギン

          部屋は私達の亡骸で満たされている ここはずっと水没している 水はひどく汚染されている その中を発狂したペンギンが一羽 泳いでいる、遊んでいる 水の中では 紙もペンも死ぬ 何も書き残すことはできない 水圧が電話線をちぎり どこにも繋がらない 神はいつでも生き物が死ねるよう、重力を作ったのに ここにはそれがない 残酷な浮力だけがペンギンを永久に生かす 私達の亡骸のなかで

          傷と光

          この文字を見てくれた人全員を好きになるから、愛をおくれよ 一人にも心を許してない人の指も傷つく、本のページで 短調のポップソングで歌われた玩具みたいな悲しみ、誰か 美容師が髪を拷問するあいだ開く雑誌の洋服、ごはん 光降る動物園の外側のホモ・サピエンスのエリアで暮らす 僕たちの下に埋まった鉄道が週一ひとを轢いている春 家々のベランダ全て日に当たり、乾く彼女のパンツを想う 切り花は徒花、君のアパートで終わる定めの花になりたい 初夏の光のなかで魂を分け合うように棒ア