わたしには、知らないことだらけ
好きな人に触れることが、なぜ犯罪なのか
死ななくても全てを失えるのに、なぜ死ぬのか
あたたかい人々の中には、あいとたたかいがあって
わたしの中には、なにがあるのか

わたしの血はたぶん音楽だから、切りつけてそれを流す
そうしてできた血溜りには、逆さまの世界が映っている
その逆さまの世界のなかで、叫んでいる人がいる
燃えている街がある
飛ぶ鳥がいる
昼の港がある
船が出ていく
いくな!
わたしを置いて、どこにも

目を覚ますと窓がある
カーテンが、光が、揺れている
血溜まりの向こうから歌声がする
「この音楽を聴いてくれた人全員を愛します♪」
聞いたことのある声だ
「もう何も教えてあげられないけれど、全て忘れさせてあげます♪」
ああ、これって

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