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食べ物を粗末にしてはいけない 〜「続余力ゼロでいきてます」女優 水野美紀

 私は独身なのでわかりませんが、子育ては想像を絶する大変さだと聞きます。今回は、女優の水野美紀さんのAERAdot.で連載中の「続・余力ゼロでいきてます」というエッセイの中から、「“教育”に決して手を抜かない夫と一枚上手なちびの攻防に爆笑」の回を取り上げたいと思います。

 水野美紀さんは42歳で結婚されて現在2歳半の男の子の子育ての最中です。お子さんのことを「ちび」と書いておられ、ちび君の成長のスピードは恐るべしです。

 ちび君のためにも3食きちんと料理をされている水野さんですが、ちび君は野菜、特に緑色のものは美味しくないと認識してしまった様子で、つまんで出してしまうそうです。ただ、野菜ジュースは好きなのだそう。

 さて、ある日夕食の最中にちび君がそうめんを手で掴んで遊びだし、握っていたそうめんを床にベチャッと投げ落としたので、旦那さんが「食べ物を粗末にしちゃだめ!」と怒ったそうです。話し終えてしばらくして、旦那さんがちび君に、「どうして怒られたかわかる?」と聞くと「食べ物で遊んで、粗末にしたからでしょ?」とは答えたものの、「ちゃんと分かった?」「はい」「何が分かったの?」「やさいジュースがすき」と謎の落ちで締めくくるちび君に、水野さんと旦那さんは思わず爆笑したこととのことでした。

 小さい頃の「食べ物を粗末にしてはいけない」ということを教えられたエピソードは、まだ小さすぎて物事の本質を理解できていない状態でのエピソードだけに、大人になってから顧みると、笑える可愛らしいエピソードになっている場合が少なくないように思えます。

 私の場合は牛乳が嫌いで、嫌いと言っても牛乳は成長期には飲んだ方がいいので、別に嫌いだから飲まないというわけではなかったのですが、もう絶対に飲まない!と意固地になったエピソードがあります。まだ、母親だけは私の話す拙い言葉の意味がわかるけれど、他の人は上手く理解できないというような、2歳くらいの頃のことです。

 ある日私は母の実家の曾祖父と留守番をしていました。お昼ご飯は曾祖父と一緒に食べるように言われていたのです。

 さて、ここで一つ目の問題となる点ですが、曾祖父はキャラメルコーンが大好きで(キャラメルコーンを知らない人へ。まあ、一種のスナック菓子ですね)、自分が座っている席のすぐ横にいつも常備していて、少し空きっ腹になるとそれを摘まんでいたのです。

 留守番中に私は曾祖父が摘まんでいるのを目ざとく見つけ、自分も欲しいとねだりました。それでお昼の前に結構キャラメルコーンを食べてしまった。

 さて、お昼になって、曾祖父は飲み物は牛乳を用意します。ここで二つ目の問題となる点ですが、その日は確か、結構寒かったので、曾祖父は気を利かせて牛乳をレンジで温めてしまいました。さあ、何が起きたでしょうか。

 そうなんです。私と同じように牛乳が嫌いな人には割とわかると思うのですけれど、牛乳は温めると皮が張ります。それがもの凄く嫌なんです。何なんですか?あの皮ってヤツは。寒くても、温めなくていい。ただ少し常温にしてもらえれば、よかったんですね。

 でも、「皮が張っているから飲まない(というか、気持ち悪くて飲めない)」ということを上手く私は曾祖父に説明できませんでした。曾祖父は黙って、ただ頑として牛乳を飲まない私のことを、キャラメルコーンは食べて牛乳は飲まない、そんな好き嫌いをしてはいけない、嫌いだからって食べ物を粗末にしてはいけない。そう延々と説教をし始めました。でも頑として私は牛乳は飲みません。だって、皮が張ってるんだもん。

 そんな膠着状態の中、母が帰ってきて、状況を察し、温めた牛乳を捨て、普通に牛乳パックからコップに注いだ牛乳を普通に飲み始めた私。曾祖父も母に説明をされて、自分の説教が的外れだったことに気付いたわけです。

 曾祖父は普段は全く怒らない、とにかく菩薩のような優しい人だったので、このエピソードは本当によく覚えています。もう今は亡くなりましたが、未だに時々思い出すエピソードです。

 子育て中の親御さんやその周囲の人へ。子供は、自分が思うよりちゃんと自分なりの理屈があって動いている(はず)です。余裕がないかもしれませんが、その点をきちんと理解してあげましょうね。

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