【物語】銀色の星とケミカル

 アラザンには毒があります。


 アラザン。ケーキなどのトッピングに使われる、あの銀色の小球体。

 見たら分かるでしょう、あれは人が食べていいものではありません。

 あれはきっと、金属でできている。
 銀のように輝き、鉄のように硬く、あるいは、きららのように脆く、そして水銀のように毒性のある、そんな金属で。

 口の中で噛み砕かれたアラザンは無数の小片となり、その無数の小片は、ひとつひとつが小さなナイフのようなもので、口の中を、喉を、食道を、胃を、腸を、傷つけ、人を死に至らしめるのです。
 あるいは、水銀や鉛のような中毒死かもしれない。
 そんなわけで私は、命が惜しい私は、アラザンを避けて生きてきました。

 アイスクリームをお店で買うときは、必ずトッピングはアラザン抜きでと注文します。
 店員さんは不思議そうな顔をしますが、命が惜しい私にしてみれば至極当然のことなのです。

 アラザンの載ったケーキは食べませんでした。
 アラザンの毒はケーキに染み出すので、一度アラザンで飾られたケーキは毒入りケーキとなるのです。

 さて、私の生い立ちはこの辺りで切り上げて、ここからは彼と私の人生についてお話しようと思います。

ここから先は

2,902字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?