物理数学シリーズ⑤:論文との付き合い方基礎講座;論文を読んだり論文を紹介されたときの超基本的な注意点

論文という存在について、どのような印象を持っているだろうか?
専門家が専門知識や最先端の技術、最先端の見方に従って学術的に調査された、とても価値のあるものに感じたりはしないだろうか。
だが、それは完全に間違った見方であり、論文が大好きな論文大好きマニアのエセ学者によるプロパガンダにはまっている。

論文と聞くと難しそうで理解できなさそうに思うかもしれないが、テレビやマスコミに登場するような言論人や自称専門家たちは論文を根拠にして大嘘をついてプロパガンダを流すことも多いため、われわれのような一般人であっても、論文の基礎を知っておくことは非常に重要である。
そこで今回の記事では、論文の素人であっても、論文とどのように接していけばよいかを論文の素人向けに説明する。

筆者は大学および大学院を工学系の研究者として論文を書く立場となったり、論文を査読したり、論文を読む立場として研究をしてきた。
さらに筆者は、大学を卒業してから日本の大手金融機関の金融経済研究所に所属し、金融工学を中心とした研究者として論文を書く立場となって研究をしたり、論文を査読したり、論文を読む立場として金融経済の調査・分析・研究をしてきた。
そんな筆者が論文とはどういうものか、論文を読んだり論文を紹介された時に、どのような心構えで論文と接すれば良いかを解説する。



論文には大きく分けて二種類ある。
ひとつは完全なる理論について書かれたものと、もうひとつはある特定の理論に基づいて実際に実験をしたりデータを見ることで特定の理論が正しいかどうかを検証するものである。
一般的には後者の論文が多い。
以下では、後者の論文について説明することとし、単に「論文」と言った時には、この後者のタイプの論文を指していることとする。


論文と言うのは多くの場合、ある理論に基づいて立てられた仮説がただしいかどうかを示すものが多い。
例えば、衝突安全機能を持った自動車が実際に衝突事故を起こした時に、乗っている人が無事でいられるかと言うことを、実際に衝突事故を実験的に何度も起こして安全性を検証するようなものが論文として書かれるというものである。
この場合、①実験で起こす事故は実際の事故に近いものか、②実験で起こす事故が実際の事故で実際に人が受けるダメージと近いものか、などが重要になる。
①実験の内容が現実とあまりにもかけ離れていては実験の意味がないし、②実際に人が受けるダメージを計測するには実際に人が乗った状態で実験をすれば良いが、それは危険なので行われないことが多いが、実際の状況とかけ離れ過ぎていては、実験の意味がないことになる。
論文と言うのは、このバランスがとても重要なのである。

では、実際の論文ではどのようなことが行われているかというと、

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