【一首鑑賞】オールアラウンドユー/木下龍也より


木下龍也さんのオールアラウンドユーを読みました。ちなみに私が買ったのは赤です。部屋に置いておしゃれで嬉しい!


特に好きだった歌を引いて私なりの感想や想像を残したいと思います。

波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる
オールアラウンドユー/木下龍也

波の旅に思いをはせました。

自分が主体として海に行ったところを想像したのですが、長い旅を終えた、波の終わりが自分でいいのかなと考えてしまいました。

ひとつひとつ、と本来地続きである波が区切って表現されていることによって波が生き物のように思えてくると思いました。


雨、ぼくはぼくより不憫なひとが好きで窓から街を見ている
オールアラウンドユー/木下龍也

部屋の中から窓の外を眺めているのでしょう。

日常の中のふとした瞬間に気づく自分の冷たさみたいなものがあると思うのですが、そういった瞬間も短歌で捉えられるのだ!と思いました。

書いていないのでわかりませんが、もしかすると窓の外の人を不憫だと捉えてしまった瞬間、自分の心の不憫さに気づいたのかもしれません。

悲しみは洗練されてゆくだろう胸にしまえる鈴のサイズに
オールアラウンドユー/木下龍也


悲しみが訪れた直後の混乱した状態のときにそばに置いておきたい歌だと思いました。

悲しみもきれいな鈴のように小さく洗練されていって、ふとしたときに取り出して鳴らして思い出せるものになる、と思うと希望がもてる気がします。


殺さずに愛せないかと考えているうちに木を燃やし終わる火
オールアラウンドユー/木下龍也

火の悲しみを想像しました。
大切に考えていることと、燃やして傷つけてしまうことは別、というのが切ないです。

手をつなぐ影のどこまでぼくなのかわからないまま闇に溶けたい
オールアラウンドユー/木下龍也 

二人が影でいる間は境目がわからないからひとつでいられる、逆に影でなければ完全に溶け合うことはできないという切なさを感じました。


こうしてみると、木下さんの歌の中でも特に寂しい歌というか、対象と一枚何か距離があるような歌が好きなのかもしれません。

感想を書くのは難しいけど、楽しいのでまた別の歌集でもnote書いてみたいです✏️

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