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世界のバリスタがコーヒーのトレンドをつくる

スペシャルティコーヒーは次々とその味を常に進化をさせており、どんどん美味しいコーヒーが生まれているように思います。

私がサードウェーブはただのブームではなく変革で、立役者の代表格がブルーボトルだという話をしましたが(あくまで立役者)、そもそもつきつめると源流ってどこなんだろう?など考えをめぐらせていました。

ところで、定期的に自分の常識を覆すほど美味しいコーヒーに出会ったりするのですが、なぜこんなに美味しいのかを分析してみるとそこには、新しい要素があったりします。

最近出会った一番美味しかったコーヒーはSTANDARTというスペシャルティコーヒーのマガジンの付録で付いてきた豆でした。香港にあるAmber Coffee Brewery というロースターカフェが焙煎した商品でしたが、たちこめる香りが今までとは一線を画すほどユニークで、スッとミントの香りがしました。何者か!?と思いプロファイルを見てみるとそこには Anaerobic Washed Processと聞いたことのないプロセスが記載してありました。(Techy な話になるので興味なかったらとにかく珍し感じなんだなと思ってもらえればOKです。)

聞いたことないぞと思い調べてみると、割と最新の技術らしいということがわかりました。個人的にはこれは大流行するぞ!と勝手に想像を膨らませていましたが、数日経ってひょんなことから過去のバリスタチャンピオンのレシピをみてみると、この プロセスは、2019年のワールドバリスタチャンピオンシップで競技者が使っていた豆のプロセスとしてかなり話題になっていたことがわかりました。

ところでワールドバリスタチャンピオンシップとは何かというと、3種類のエスプレッソドリンク(Espresso, Milk Bevarage, Signature Drink)を入れて、その美味しさやこだわりなどをプレゼン(もちろん英語)しながら競う競技です。

優勝するためには、まず日本のチャンピオンシップに勝ち抜いて世界大会に挑みます。競争が生半可ではなく、美味しいエスプレッソをいれるために、人類が培った技術は可能な限り全て使います。理想のエスプレッソをいれるために、農園レベルまでテコ入れする人もいるくらいです。

そして、はれて世界大会で優勝しワールドバリスタチャンピオンになると、農園や、コーヒーショップ、講演など世界中から仕事が舞い込んできて、一年のほとんどを海外に飛び回るような生活になります。他のコーヒー関連のチャンピオンだとしてもここまで世界から引っ張りだこになることもないです。

まるでM-1チャンピオンに輝いたお笑い芸人のように一夜で生活が変わるような感じですね。(ちょっと違うか。)

私の好きな2004年のワールドチャンピオンのTim Wendelboeも、現在はコーヒー農家を頻繁に訪れ、次世代のコーヒー開発に勤しんでいます。彼は自分の農園をコロンビアに持っておりコーヒー農業の発展のための研究に寄与しているとのこと。(Barista Magazine 2015 APR-MAY)

少し話がそれてしまいましたが、こうした最新のコーヒー生産技術を反映させた豆を使用し、革新的な味を引き出さないとバリスタチャンピオンにはなれないということが、レシピから現れています。そして優勝するためにある人は農園とタッグを組んで品質改善に勤しんだり、ある人は優勝後に農園を自ら所有し大学と研究を行う。その道のりこそ、スペシャルティコーヒーの営みそのものです。

つまりこういうことです。スペシャルティコーヒーのブームというのは、このバリスタチャンピオンとそのコンペティション自体が源流なんじゃないか?ということです。私が感動した前述のAnaerobic Process のコーヒー豆を焙煎したロースターも2014年2015年と香港代表でワールドバリスタチャンピオンシップに出場。2015年の大会でも4位に輝いています。彼らの感度の高さが伺えます。

でもここで少し引っかかることがあります。コーヒー技術は日進月歩なのにも関わらず、スペシャルティコーヒーというのは段々認知されたというよりかは、サードウェーブというものと一緒に一瞬で広まった感じがあります。

私の見立てはこうです。

毎年行われるバリスタチャンピオンシップのために、バリスタ達が牽引し、コーヒーの生産技術の革新は日進月歩で行われている一方で、スペシャルティコーヒーというものは、コンシューマー品として、うまく市場に浸透しなかったが、サードウェーブというキャッチーで安っぽいワードと共に決壊したダムのように一気にその概念がブームとして広がり、資本力がついたことにより、サイクルがサステナブルな体質になりサプライチェーンが変革している。

まとめすらかなり複雑になってしまいましたが、一言で言うとバリスタチャンピオン達のおかげで今日もコーヒーが美味いということが言いたかったのです。

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