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BOOK REVIEW➓:アフリカ出身サコ学長、日本を語る

アフリカ系として初めて日本の大学の学長になったウスビ・サコ学長の自叙伝を読みました。

知るきっかけになったのは、このチラシでした。

サコ学長は、マリ出身で京都精華大学の2018年より学長に就任しています。

こちらのブログも面白く、どんどんと興味が湧いて、自叙伝を手に取りました。

読んだのはこちらの本、「サコ学長、日本を語る」

面白いなと思ったポイントを9つ整理しました。

1. 日本に協調性は無い、空気の悪用


マリにはグレンという「迷惑を掛け合うコミュニティ」が存在する。お互いのことを思って相談したり自分の感情や悩みをさらけ出せる場所。相手のことを助言したり、心配したり、叱ったりする。叱るのは人格否定ではなく、人格を認めているからこそする行為である。日本人は相手に迷惑をかけないようにしている、本当の「協調性」がないのではないか。「空気を読む」というのは本当の意味での「協調性」を否定しているように思える。

2.自由は勝ち取れ

「自由論」の授業では学生はよく「〜が欲しい」という答えを書く。他者や誰かが自由を与えてくれるように誤解しているよう。しかし、自由とは本来勝ち取るものである。

3.外国人労働者=異文化の流入であることを認識しよう

外国人労働者には、働くための最低限の日本語と日本文化を簡単に教えればいいという訳ではない。労働者だけが入ってくることはなく、労働力を持っている人間は文化を、宗教を、価値観を持っている。労働力が来て、その人が日本社会に入るために言葉と文化を教えればいいという発想は超危険。日本がその人たちを社会の一員として受け入れる準備がどれぐらいできているかが問われる。

4.学校以外の「学びの場」が必要

学校とはフレームを学ぶところ。ある意味「日本人養成課程」である。日本人は学校に期待しすぎる。「学校のみが学びの場」という思い込みを外してみてはどうか。

5.不平等な日本の教育

日本の教育はダブルスタンダード。平等だと言いつつ、自分の価値観を持っている子が拾われていない。それでは不平等

6.個人の幸せに合わせた教育を

日本の教育は「目標教育」でもない点で全く先進的ではない。「あなたは何になりたいか」「何をやりたいか」に合わせて将来にとってどのような教育がいるのかを考える、それが本来のすがた。しかし、偏差値の高い学校に行くことが大きい傾向にないか。

7.学校=(同化好きな)日本人製造機

日本は「国家における日本人像」を学校によって作ろうとしている。そこから本来であれば自分の力で自立しないといけないけれど、結局は縛られることが好きなようにも見える。

8.すぐに諦めるな!

日本人は諦めることが得意。頭を叩かれるとすぐに諦める。

9.深く考えない国民づくりの成功

「集団的○○」がなくなりつつあるはずの「個」の時代に、日本は集団的パッケージ教育(日本人作り)をしようとしている。世界的には国民国家的思想はそろそろ終わりなのに逆流している。教育はフレーム化され、そのような状態に日本人は安心している。独裁政権が好きなのだろう。深く考えない国民作りに成功している

などなど、とても面白い本でした。「日本の学校は個人の幸せにフレーム軸が無い」と言い切っているところがありがたい視点。

大学教育が「高い就職率=いい大学」との認識にばかり傾倒し、産業化し、生徒が個性をさらに伸ばせる教育にもなっていない点にも触れています。

また、コロナをきっかけにして、明るみに出た世界各国の関係性、特にヨーロッパのき弱声が見えたこの危機で、アフリカから移民する人が減っているということや、アフリカ諸国が自国のリソースを再確認し社会発展して行くのではという今後のアフリカ隆盛の機運を感じられ点もワクワクしました。

外からの視点で日本をみる、日本の教育をみるって面白いですね。ぼんやり、そうかな?と思っていたものがそうだとわかる瞬間。気持ちいいですし、そうやって比較対照していくことでさらにより良いものになる気がします。


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